そして今年1月、ポルトアレグレに戻ってきた第5回WSFには日本からもATTAC J apanを含めNGO関係者・市民グループらの参加があった。しかし、日本のメディアはWSFの模様を一切伝えようとしない。フランスでは日刊紙のル・モンドやリベラシオンが特派員を送ったほか、中道左派の週刊誌ヌーベル・オプセルバトゥールも特派員を送り込み、リベラシオン紙は「オルターグローバリズム、政治のUFOが着陸した」(1月26日付)、「ポルトアレグレは理念の見本市」(同)など多数の分析・論説記事を、ル・モンド紙も「ポルトアレグレでルラ大統領は極左の不満と直面している」(1月28日付)といった記事を掲載した。
ル・モンド紙の記事は、WSF内部の政治的対立や組織の在り方について批判的な書き方をしている。「ルラ大統領は極左抗議に遭って闘士の熱情を取り戻した。貧困に対する行動アピールは、WSFの公平無私をばっさり切り捨て政治集会に変えてしまった」(1月28日付)
確かに、WSFに出席したブラジルのルラ大統領はラテン・アメリカ諸国と和解し、自分の提案を擁護するためダボス経済会議に行くことを選択した。つまりWSFとダボス経済会議との対話を進めようというのだ。また、29日には、ノーベル文学賞受賞者のポルトガルのホセ・サルマゴ氏やATTACのベルナール・カッセン氏、エジプトの経済学者サミール・アミン氏ら19人の知識人が▽開発途上国の債務帳消し▽タックス・ヘブンの廃止▽外国軍基地撤廃▽環境破壊防止――など12項目についてのマニフェストを発表している。これに対してタイのNGO関係者らからは「開かれた空間であるだけでは不十分だ」とし、「もっと政治的な立場を明確にするべきだ」という主張も出た。こうした様々な政治的駆け引きや軋轢がWSFの性格に影響を与えないはずはないであろう。
しかし、「多様な運動体による運動」が現に地球規模で進められているという事実に変わりはない。リベラシオン紙などはWSFを「NGOと社会運動の国際連合」とまで評している。少なくともWSFで何が議論され、何が問題になっているのかを伝える価値は十分にあるであろう。WSFとともに広がる地球規模の連帯の動きを無視する日本の新聞には驚きしか感じない。ちなみにリベラシオン紙によれば、WSFの06、07年度の開催国の候補としてベネズエラ、モロッコ、南アフリカなどとともに、韓国が上がっている。将来、日本もアジアの候補国としてノミネートされる日が来ることを期待したい。
註) 「世界社会フォーラム 帝国への挑戦」(作品社) |