協働のデザイン  第15回 協働のルールづくり
               〜事例研究 NPO先進県、三重県の取り組み 協働ワーキング報告書  

世古一穂(代表理事)

キーワード    協働ワーキング、協定、協働の前提

  三重県では平成16年度に三重県が打ち出した「新しい時代の公」推進を図るため、「協働を検証」し、「協働のしくみづくりに向けた提案」を導き出すことを目的に、全庁横断的な県職員による協働ワーキンググループを設置(参加者:26名 アドバイザー NPO研修・情報センター 世古一穂)し、これらの取り組み課題に対して様々な議論を重ねてきた。

            本稿では筆者がアドバイザーとして同ワーキングに関わってきた立場から、また、これからの協働を実践する上で、各地で参考にしていただける内容の濃い提案となっていると思われるので、その成果を紹介しておきたい。
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1.三重県庁内協働ワーキンググループの検討経過
  庁内協働ワーキンググループでは、望ましい協働事業の形成プロセスを検討するなかで、市民セクターと行政セクター間の役割分担や行政の本来的役割、将来的役割や仕組みについて議論を重ね、その検討結果をまとめている。

  三重県では、1998年11月にこれからの社会のあり方として、「みえパートナーシップ宣言」を発表している。同ワーキングでは、三重県がこれまで「みえパートナーシップ宣言」を実践してきて、より質の高い協働事業を進めるために、
 @お互いの立場の違いを理解すること
  A対等な立場で話し合う姿勢を確認しあうこと
を行政セクターと(県)と市民セクター(NPO等)との協働の前提として確認した。

  その上で、この協働の前提を確認し、協働事業を進めるためには、各協働事業ごとに「必要な約束ごと」を、「協定」として相互でとりかわすことが有効とし、具体的には次の項目を盛り込むべき内容として提示している。
  @定期的に相互が、情報交換・意見交換できる機会を持つとともに、必要な時はいつでも話し合える場も設置する。
  A望ましい協働のあり方・進め方を話し合う。
  B事業の進捗度合いに応じて目的を共有していることを確認する。
  CNPO等の提案企画内容の知的所有権を尊重する。
  D常に透明性を確保する。
  E事業終了後に、ふりかえり会議(第三者を交えたNPOと県の両者による事業検証)を実施し、その中での気づき      を次の事業の実施において反映させる。

2.望ましい協働事業を推進していくために必要な取組
  協働の前提をお互いに確認し、各協働事業ごとに「必要な約束ごと」を「協定」として相互でとりかわし協働事業を進めるためには、いくつかの取り組みを検討し、協働の環境整備を図ることが必要となってくる。協働ワーキンググループでは、以下の項目を中心に、望ましい協働事業を推進していくために必要な取り組みとして検討した。

  これまで協働ワーキンググループにおいて、協働の前提をお互いに確認し、各協働事業ごとに「必要な約束ごと」を「協定」として相互でとりかわすことや、望ましい協働事業を推進していくために必要な取り組みとして7つの項目がピックアップされている。
  @事業開始時には事業ごとに協定書を締結する
  Aふりかえり会議成果を反映できる事務事業評価の作成
  B事業企画・実施のプロセスに対応した事業期間、契約方法、予算、人事の仕組みづくり
  C行政とNPOの人材交流(人材育成)
  D中間支援センターで県の役割を果たすための環境づくり
  E協働事業の評価結果の予算編成への反映
  F公の施設の 使用に関する運用方針の見直し

  協働ワーキンググループにおいては、この7つの項目について、「なぜ取り組むことが出来ないのか、どうすれば出来るようになるのか」といった詳細な議論を重ね、どのような現状や課題があるのか、そして、その課題を克服し協働を推進していくためには、どのような仕組みや改善が必要なのかということを、5つのカテゴリーに分類し議論を重ね、その成果を下記の現状・課題と今後の提案内容としてまとめている。

3.コメント
  前掲の『協働ワーキンググループの提案内容一覧』の現状・課題は若手の行政職員が、自らの業務をふりかえり、真摯に議論をしあって抽出した現状、課題であり、これまでの行政の報告書では出てこないような行政の現状の問題点が整理され、素直に出されているのが特徴だ。それはワーキンググループのメンバーが行政職員の視点だけでなく、市民の視点から行政の仕事を見直してみようと議論した成果といえるのではないだろうか。

  今後の取り組み提案として提案された内容についても
  ・ 委託契約の内容を協働に対応したものにし、契約の条項中に別途協定書を締結する旨の規定を置く
  •  無償と考えられがちなNPOの労力等を評価するため、協働事業提案の「企画料」を保障
  •  各費用算定にあたっては、対等性の考え方に基づいて、県内部の判断基準資料を作成
  •  全職場に「協働推進員」を配置し、行政経営品質の取り組みと同様に協働の理解を深める取り組みを推進
  •  行政財産の目的外使用に際し、協働事業については、積極的な利活用が出来るようにする
  等、これまでの行政の枠を超えて、踏み込んだ内容となっている。また、この報告書自体が(案)の段階で公開されていることも、開かれた行政を目指す姿勢の反映といえる。

  これらの庁内ワーキンググループの提案は、3月末に出される「新しい時代の公」推進調査報告書にも反映されるという。協働推進の先進事例として三重県の取り組みに注目していきたい。

協働ワーキンググループ・三重県生活部NPO室「協働ワーキング報告書 (案)」および三重県の取り組みの詳細は 三重県NPO室HPを参照して下さい。 http://www1.mienpo.net/npot

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