2.NPOの評価団体の国際組織=ICFO
NPO(NGO)の評価機関(団体)の国際的な連合組織としてICFO(募金団体国際委員会=International
Committee on Fundraising
Organization)がある。ICFOは1958年にオランダ(アムステルダム)で設立されたが、現在の本部(事務局)はドイツ(ベルリン)にある。
設立の目的は3つある。第一は、寄付者に対して信頼感を与えること。つまり、寄付したものが目的通りに使われているということを知らせる(評価する)ためである。第二には、NPOを支援してくれる寄付者に対して透明性と誠実性を与えるため。第三に、NPOの国際基準を形成していくこと、である。
現在の参加国は欧州のオーストリア、フランス、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、スイス、英国、そして北米のカナダと米国の10カ国(10団体)である(英国は正式メンバー団体以外に、支援メンバーとしてもう1団体が参加している)。
各国・団体の評価基準は国により異なるが、できるだけ統一していこうという意向にあり、そうした基準を現在開発中である。しかし、社会構造や文化の違いによって評価システムは異なり、あるいは似ている国もある。例えば、オランダとスイスは類似しているが、オランダと英国とはかなり重要な違いがある。オランダでは理事会の構成に血縁者のダブル配置はダメとしている。NPOの不正は意志決定を血縁者内で行われる場合に起きやすいからである。これに対し、英国では貴族社会のため、お金持ちの貴族が自分のNPO(財団)を設立してチャリティ活動している場合が多く、その際に理事会には血縁者が名を連ねている場合が通例となっている。そのためオランダ的評価システムを英国に移植するのは非常に難しいのである。
英国のNPO(チャリティ団体)の評価は、チャリティ・コミッションが行っており、600人ものスタッフによって募金を管理している。また、フランスは大きな50のNPO(NGO)について評価を行っているという。
ICFOの会員国以外にも評価機関はあるようだが、インタビューしたオランダCBFの所長によれば、アジア諸国でも評価機関の設立の動きがあるとのことで、最近は中国からのミッションがオランダのCBFにも訪れているという。しかし、評価機関のない国も多く、インドやオーストラリア、それに日本にはまだない。
オランダには戸別訪問による募金を除き、募金に関する規制はない。NPO評価に関して、民間(NPO)団体としての評価機関は所定の基準を達成しているNPOに対しては申請に基づき「認証マーク(シール)」の使用を認める制度をとっているが、これに対して、最近の募金団体の動きとして、民間の評価機関による認証ではなく、政府の評価機関による認証を求める動きがあるという。政府のお墨付きの方が民間の多様な評価機関による認証より権威があるからということらしい。
オランダにも募金団体の連合組織が設立されており(Vereniging van Fondsenwerverde
Instellingen/Union of Fundraising
Institution=VFA)、ロビー活動を強めているため、ひょっとすると5〜10年以内には政府の認証制になる可能性もあるという。NPO(NGO)はそもそも政府から独立的であったはずだが、政府からの認証が欲しいという発想はNPOの位置づけの変化を物語るものであるとも思われる。
オランダのVFAは、会員は募金を行っているNPOで、会員団体数は190弱である。これらVFAの会員による募金額は全オランダの募金額の90〜95%を占めている。このため次第に政治力をもち始め、有力のロビー団体となっている。
政府(法律)による認証制の導入についてVFAを訪ねて聞くと、NPO(募金団体)は透明性が必要であり、しかし募金競争が厳しくなると、類似の団体ができて独自の認証マークを出すようになるなど次第にあいまいになり、認証基準が乱れてきたり、NPOによる認証シールなどの意図的な乱用による社会への信頼の喪失の懸念もでてくる恐れもある。そこで、法律によって募金できるNPOの基準を設定し、厳正に審査することによってNPOへの信頼感を持続させるのがいいという意見があるとのことであった。
欧米主要国の評価機関・評価システムの比較については別の機会にしよう。 |