吉野川下流の小石 (徳島県吉野川市・阿波市)
吉野川は、その流域が四国四県にまたがり、石鎚山や剣山に降る雨も集めて紀伊水道に注ぎます。
古くから「四国三郎」と呼ばれ、「坂東太郎」の利根川、「筑紫二郎」の筑後川とともに、日本の三大暴れ川に数えられていることでも知られています。
まだ春の初めというのに、空の色を映して吉野川を流れる水は濃い青色。下流で川原に下りることができる地点を探していて、たまたま立ち寄ったのが川島橋でした。
川島橋と吉野川の川原(吉野川市側)
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1.川島潜水橋
車で堤防の上から川に向かって下っていくと、川の流れのすぐ上にコンクリートの橋が架かっていました。川島潜水橋です。
潜水橋とは、文字通り「水に潜る橋」。欄干のない単純なつくりで、増水すると橋全体が水に潜ります。抵抗なく水を流すことで壊れにくく、水が引いたあとも早く橋を渡ることができます。
橋の幅は3mほどで、車一台がやっと通れます。ハンドル操作をまちがえると川に落ちそうです。対岸から車が来ていないのを確かめてから、ゆっくりと橋へと入りました。
橋の途中でお遍路さんに出会いました。橋の数ヵ所に外側に張り出したところがあって、お遍路さんがそこに入るのを待って、その横を通りました。ここは、四国霊場をつなぐ遍路道なのです。
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川島橋と吉野川の川原(阿波市側) |
橋の南側(吉野川市)の川原には大きさ30cmほどの石をふくむ大小の石が広がっています。橋を渡った北側の川原(阿波市)は、南側より川原が広く3cm以下の小さな小石が主体です。
川の両岸の石の大きさは、増水時の流速のちがいを反映しています。
2.川島橋上流の地質
吉野川の中流部〜下流部は、ほぼ中央構造線に沿って流れています。
北側には、白亜紀後期の和泉層群が分布しています。砂岩や泥岩を主体とする地層です。和泉層群の地層は、白亜紀〜古第三紀に前弧海盆に堆積してできた地層だと考えられています。
南側には、三波川変成帯にあたり、主に結晶片岩が分布しています。結晶片岩には、堆積岩起源の泥質片岩・砂質片岩・珪質片岩や、火山岩起源の苦鉄質片岩(緑色片岩など)などがあります。
三波川帯の変成岩のもとの岩石は、白亜紀後期の付加体(四万十帯北帯にあたる)です。それが、9000万年前〜6000万年前に地下深くの高い圧力によって変成作用を受けました。。
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川島橋上流の地質図(日本シームレス地質図V2(GSJ、AIST)を利用して作成) |
集めた石をひとまとめにして、水で濡らしました。結晶片岩やチャートなどの小石は、水で濡らした方が模様や色が浮き上がってきれいに見えます。
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採集した小石(水に濡らして撮影) |
3.川原の小石
緑色片岩
玄武岩などが変成作用を受けてできました。緑泥石や緑簾石をふくんで緑色をしています。緑泥石が多い場合は濃緑色、緑簾石が多い場合はウグイス色です。
片理に沿って割れやすく、小石も平たいものが多く見られます。緑泥石・緑簾石の多い色の濃い層と、石英・長石の多い白っぽい層が縞をつくっています(縞状構造)。また、小さな白雲母の結晶がきらきらと光っています。
白い曹長石の結晶が生じた点紋緑色片岩や、褐色ガラス光沢の柘榴石や暗緑色の角閃石が生じているものもあります。
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緑色片岩 |
紅簾石片岩
石英の割合が多い結晶片岩ですが、紅簾石をふくんでいるため赤紫色〜ピンク色をしています。片理や縞状構造が発達し、白雲母がキラキラと光っています。紅簾石は、赤紫色でガラス光沢をもった小さな粒として観察できるものがあります。
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紅簾石片岩 |
泥質片岩・砂質片岩
泥岩や砂岩が変成作用を受けてできました。白黒の細かい縞模様が見られます(縞状構造)。縞模様には微褶曲が見られるものが多くあります。黒い部分は、黒雲母・白雲母・石墨が多く、白い部分は石英・長石が多くふくまれています。
淡褐色の結晶片岩(写真下中央)は、ほとんど石英からなる珪質片岩です。
曹長石が生じている砂質片岩や、柘榴石が生じている泥質片岩が見られました。
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泥質片岩・砂質片岩 |
砂岩・泥岩
砂岩は、褐色から灰褐色で、一つひとつの粒が見える中粒砂岩が多く見られます。
泥岩は、 黒色で、珪質で硬いものが多く見られます。
砂岩や泥岩の多くは、流域の北側に分布している和泉層群のものです。砂岩や泥岩の中で、硬く緻密なものは南の秩父帯(ジュラ紀付加体)からきている可能性があります。
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砂岩(左)と泥岩(右) |
チャート
いろいろな色をしていて、赤褐色・暗灰色・淡緑色・白などがあります。
チャートは、主に微小な石英からできていますが、石英だけからなら白色です。赤鉄鉱がふくまれると赤っぽくなります。黒雲母や炭質物などがふくまれると黒っぽくなります。緑泥石や緑簾石がふくまれていると緑っぽくなったりします。ほとんどが石英からなる真白い小石は、石英脈だった可能性があります。
チャートは、吉野川流域の南に分布する秩父帯から流れ込んできたものと考えられます。
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チャート |
■ 場 所 ■ 徳島県吉野川市・阿波市
■探訪日時■ 2024年2月28日
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