砥峰高原G(800m) 神河町 25000図=「長谷」
ススキの芽吹きと緑のボール
砥峰高原は、ススキ原保護のために遊歩道以外の立ち入りは禁止されています。今回は、湿原調査のために、許可をいただいて草原内に入りました。草原内では、できるだけススキの新芽を踏まないよう、気をつけて歩きました。
砥峰高原 緑のボール
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山焼きから20日ばかりたった砥峰高原。ススキが焼けて黒くなった地表に、新しい緑が薄く浮かび上がっていた。
気温15℃。あいにくの雨で肌寒い。交流館から見る高原は、雨にけむっていた。左手のピークの下が、焼かれずに残っている。これは、ススキの生育に毎年の山焼きが良いのかどうかを検証するために火入れを行わなかったところ。
高原の上部にも、雪をかぶっていたため焼けずに残っているところがあった。
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雨にけむる砥峰高原 |
始めに湿原に向かった。人工的な平地に斜面から流れ込む湧水があって偶然できた湿原。小さなか弱いこの湿原に、イノシシの荒らした跡が前回よりさらに広がっていた。
夏にはモウセンゴケが白い花をつけ、ハッチョウトンボが飛ぶ。しかし今は、ポツリポツリと落ちる雨が、浮かぶ水の表面に小さな円を描くばかり。
水からはい出たイモリが体をくねらせてどこかに隠れようとしていた。
湿原から池の方へ歩いた。ススキは、根元から数cmだけ燃え残り、燃え残りの上は焼けて黒くなっている。その脇から、新しい芽が萌え出していた。新芽を踏みつぶさないように、そっと地面に足を置いた。
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ススキの新芽 |
岩の重なる浅い谷を下ると、池のほとりに出た。小さな川が草原を蛇行して流れ、池に注いでいる。
流れの傍に、ショウジョウバカマが咲いていた。春、砥峰高原で一番早く咲くピンク色の可憐な花。
池には、ヒルムシロが茶色に染まった葉を水面に浮かべていた。
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ショウジョウバカマ |
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高原を蛇行する小川 |
池のほとりに立つ |
池のほとりで、オオミズゴケの群落を見つけた。うれしい発見だった。
オオミズゴケは、茶色のじゅうたんのように広がっていた。雨にぬれ、水をたっぷりと吸い込んでいる。手で押さえると、ふわふわとしたやさしい感触が伝わってきた。
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オオミズゴケ |
池から散策道に戻り、木道に入った。木道は雨にぬれ、滑りやすかった。あたりはすっかり焼けているのに、木道の板は焦げてもいないのが不思議だった。
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高原の木道を歩く |
木道の途中から、草原の内部に踏み込んだ。砥峰高原に点在する湿原の分布を調べるためである。
砥峰高原のススキ原は、毎年の山焼きによって維持されている。湿原は小さな規模で、この草原内に点在している。しかし、年々その面積が小さくなり、カキランやノハナショウブはその数を激減させた。
雨が降り続き、草原の中のあちこちに水が浮かんでいた。登山靴は、ススキの燃えカスですぐに黒く汚れた。
ここでも、オオミズゴケの群落をいくつか見つけることができた。
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水たまりの畔にオオミズゴケ |
草原の中に、一筋の小川が流れていた。幅はまたぐことができるほど狭いが、意外と深く水量も多い。草原の黒土を深く侵食して、蛇行しながら流れている。
ここに、おもしろいものを見つけた。小川の中や川べりに、侵食に取り残された部分が丸いテーブルのように立ち並び、それが新芽の緑に包まれている。丸い緑のボールが右に左に少しずつ折れ曲がりながら、点々と続いていた。
この芽が何の芽なのか分からない。周囲のススキよりも早く伸び、密に生えているためよく目立つ。山焼き直後だけに見られる、何か日本庭園を思い起こさせる、不思議でユーモラスな光景だった。
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緑のボール(手前は燃え残ったところ) |
山行日:2015年4月19日
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