宍粟市山崎町は、兵庫県の南西部に位置しています。この町は、町の中心部に山崎断層が走っていることでも知られています。ここに平成12年、「災害に強いまち・ひとづくり」をめざして宍粟防災センター(開館時:山崎防災センター)が開館しました。 この施設は、災害時に災害対策活動の拠点施設としての機能をはたします。また、平常時は、市民のコミュニティ活動のための場であり、防災知識や災害時にとるべき行動などを学習できるスペースでもあります。 5階建の建物には、山崎断層による直下型大型地震に備えての免震システムが取り入れられています。
玄関を入ると、床面に山崎町付近の空撮を配したジオラマが広がっています。正面には大きな地球儀が置かれ、その下に地震の起こるメカニズムや自然災害について解説したパネルが置かれています。 パネルは、「山崎断層」、「活断層とは? 内陸地震のしくみ」、「地震動を記録する」、「日本の活断層 1881年〜1995年の主な震央の分布」などです。 「避難&救急用品」のコーナーには、ペットボトルに入った水や非常食、懐中電灯などの避難用品のほか、スコップやつるはし、ヘルメットなどの災害救助用道具が展示されています。
山崎断層は、1967年に発見されました。正確には「山崎断層帯」といい、岡山県東部から兵庫県南東部にかけて分布している活断層帯です。 山崎断層帯は、那岐山断層帯・山崎断層帯主部・草谷断層の3つに区分されています。この中で、山崎断層帯主部は全長約79Kmに及び、さらに北西部(大原断層・土万断層・安富断層・暮坂峠断層)と、南東部(琵琶甲断層・三木断層)に分けられています。 山崎町は、北西部の真ん中あたりに位置しています(下の写真)。 山崎断層帯主部の活断層は、地震のたびにずれ動き(左横ずれ)、ずれの長さは数百mに及んでいます。活断層に沿って、「断層破砕帯」とよばれる軟弱な岩石が分布していますが、この断層破砕帯は侵食されやすく、それによって長く直線的な谷ができました。その地形を利用して中国自動車道がつくられたのです。 山崎断層帯主部北西部で起きた最近の地震をあげてみると、1948年、1961年(瑠璃寺地震 M5.9)、1973年(山崎北部地震 M5.1)、1984年(兵庫県南西部地震 M5.5)、1990年(上月地震 M5.2)があります。マグニチュード5級の地震は、10〜15年程度の周期で繰り返し起こっていることがわかります。 マグニチュード5というのは、地震の規模としては大きくありませんが、震源に近い所では震度4程度の強い揺れが起こることがあります。 このような小さな規模の地震とは別に、山崎断層帯主部北西部ではマグニチュード7程度かそれ以上の大きな地震が起こっていることがわかっています。一番最近では、868年にM7.2程度と推定される「播磨国大地震」が起こっています。 この地震について、平安時代の史書「日本三代実録」に、「播磨国で郡役所や定額寺の堂や塔がことごとく崩れ倒れた。京都の御所内外の石垣や家屋でも被害があった」と記されています。 この記録とトレンチ調査から、マグニチュード7級の地震は約1800年〜約2300年の周期で起こっていると考えられています。 地震調査研究推進本部(2019年)によると、山崎断層帯主部北西部で今後30年以内にマグニチュード7.7程度の地震が起こる確率は0.09〜1%(相対的評価Aランク)とされています(主部全体が動くとマグニチュード8.0程度)。 相対的評価のAランクとは、「わが国の主な活断層の中では、やや高いグループに属する」との意味合いあります。 過去の地震の記録から、南海トラフでの巨大地震が近づいてくる時期には内陸部での大地震も起きやすい傾向があるので、この山崎断層帯も注意が必要です。
1997年に、安富町安志地区で行われたトレンチ調査であらわれた山崎断層をはぎとったものが展示されています。 『この断面には、少なくとも5つの断層が見られる。この地層は、13000年前から24000年前にたまったもので、13000年以降に少なくとも5つの断層ができたことになる。 断層面では、砂礫層がくさび状に落ち込んでいる。落ち込んだくさび状の地層の年代から、2290年前〜2840年前と710年前〜1700年前に山崎断層が大地震を起こしたことがわかる。後者は、868年の「播磨国大地震」によるものと考えられている。 これらのことから、山崎断層は千数百年〜二千数百年に1回、大地震(マグニチュード7級)を起こしてできたと考えられる。今は、最後の「播磨国大地震」から、すでに千年以上が過ぎているのである。』 (『 』内は、展示説明資料を要約しました。)
地球儀の横を回って2階へ上がります。 2階は、日本の災害の歴史について展示されています。 壁には、「火災」、「地震・津波」、「風水害」、「噴火」の4枚のパネルが張られています。それぞれ、歴史的な大災害が3つずつ、文章と絵図で紹介されています。 これらのパネルを見ると、日本は自然災害の種類が多く、またその規模も大きいことがあらためて感じられます。そして、災害は繰り返し繰り返し起こることも。 反対側の壁には、大きな「日本の災害年表」がかかっています。
この宍粟防災センターでは、以前、「地震体験室」で地震の揺れを体験することができました。また、模擬火災をモニターに映しての「初期消火体験」や、コンピューターのクイズで学べる「防災Q&A」もありました。それらがなくなり、また展示内容も開館当時のままで、新しい知見や最近の災害などについて触れられていません。 学習の場としてのセンターの維持や管理に、難しい点がたくさんあると思います。しかし、これから起こる地震などの災害についての知識を身につけ、そのときの行動を考えるための貴重な施設です。これから経験する災害を乗り越えるために、子どもたちや大人がここに集まり、体験し学習する施設として発展してほしいと思いました。
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