鹿 ケ 壺 階段状に連なる甌穴群に水ほとばしる
鹿ヶ壺は、雪彦山の麓、林田川支流坪ヶ谷にある。周囲は、「やすとみグリーンステーション鹿ヶ壺」のハイキングコースが整備され、鹿ヶ壺をはじめ三ヶ谷の滝・千畳の滝・風穴・おおかつらの木など見所が多い。木々が色づき始めた11月の日曜日、家族で出かけた。
ハイキングコースの拠点となる鹿ヶ壺山荘から橋を渡りキャンプ場を過ぎると、鹿ヶ壺の甌穴(おうけつ)群がはじまる。階段状の急斜面を水が流れ落ち、大小の小滝と甌穴を連続してつくっている。それぞれの甌穴には古くからその形状などにちなんで、名前が言い伝えられている。最大のものが鹿ヶ壺で、その形状が鹿の寝姿に似ていることからこの名があり、これがこの甌穴群全体の名にもなっている。鹿の姿が、案内板と見比べてやっと分かったときは、みんなで大きな声を上げた。岩盤の割れ目を鹿の角と見るのがポイントである。
鹿ヶ壺の岩石は、生野層群下部累層の流紋岩質の溶結凝灰岩である。変質が進み、緑〜褐色、一部は珪化していて硬い。溶結構造は確認できなかった。
写真:左は「底無」、右は「駒ノ立洞」
「底無」は、深さが6mもある円形の甌穴である。飾磨の海(瀬戸内海)につながっているとか、赤い蛇が主として住みついているとか、竿を入れると大雨が降るなどの伝説が案内板に記されていた。
甌穴(おうけつ)
ポットホールともいう。河床の岩石に割れ目や節理があると、その弱い部分が早く削れてくぼみができる。このくぼみに小石などが入り込むと、渦流のため小石がくぼみの中をころがって、円形の穴に拡大する。これが、甌穴である。
写真:千畳平から仰ぐ雪彦山
鹿ヶ壺からハイキングコース、森林作業道を経て千畳平に向かう。千畳平は570〜580mも標高があり、ハイキングというにはややきつい。千畳平は、こんもりとした芝生の広場。おにぎりを食べていると、北の森林作業道から地元の人が車を連ねて上がってきて、千畳平にあっという間に8畳のたたみを敷き宴会を始めた。
千畳の滝
帰りは、三ヶ谷沿いのハイキングコースを歩く。急な下りが続くがコンクリート丸太の階段が整備されている。
「千畳の滝」は、表面が赤茶けた凝灰岩の上をいくすじにも泡だった水が逆Sの字型に流れ落ちている。「三ヶ谷の滝」は、落差20m。ほぼ垂直の壁を、幾条にも並んだ水の連なりが広く薄く流れ落ちていた。
三ヶ谷の岩石は、鹿ヶ壺のある坪ヶ谷と同じく流紋岩質の溶結凝灰岩であるが、こちらの方がさらに変質、風化が進んでいる。岩石は緑〜褐色であるが表面から赤褐色に変質しもろい。多くの同質の火山レキやチャートの岩片を含んでいる。
■岩石地質■ 白亜紀 生野層群下部累層 流紋岩質溶結凝灰岩
■ 場 所 ■ 姫路市安富町 25000図=「寺前」
■ 交 通 ■ 安富町安志から国道29号線を北へ進む。安富ダムを過ぎ、鹿ヶ壺山荘前に駐車
■探訪日時■ 1999年11月3日