西雄岳(850m)~槍ヶ峰(840m)  神河町    25000図=「大名草」


越知川源頭部、加美アルプスを歩く
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槍ヶ峰(下山後、森林基幹道千ヶ峰・三国岳線より望む)

 越知川源頭部に、誰が名付けたのか加美アルプスと呼ばれている山並みがある。今回、その山並みを西雄岳から槍ヶ峰へとたどった。
 スタート地点から沢に沿った道を進んだ。鉄の橋を渡ると、道が3つに分かれている。尾根に向かっている真ん中の道が送電線の巡視路である。この巡視路を登った。

鉄の橋を渡り、送電線巡視路(赤)を登る

 巡視路は、ヒノキ林の急斜面をつづらに登っていた。午前8時過ぎ。陽はまだ低く、光は地面まで届かない。薄暗い林の中に、火の用心の赤い札とプラ階段がときどき現れた。
 何度目かの角を折れると、自然林になった。道ははっきりしていて、クモの巣だけを注意して登ればよかった。
 送電線の鉄塔を過ぎても、道は尾根に沿っていた。オオルリが谷を隔てたところで鳴いている。正面に太陽がだいぶん高くなって、陽が射し込んできた。
 道の左に大きな岩が現れた。岩の表面はごつごつと凹凸に富んでいる。岩は破砕された流紋岩だった。部分的に、流理と球顆が観察できる。ところどころに空隙があって、そこに小さな水晶ができていた。

 尾根の流紋岩の露頭 採集したした水晶(結晶の長さ3mm程度)

 標高790mで左からの尾根と合流した。
 そこから少し行くと、角張った石がぎっしりと集まった小山のような岩が見えた。何かと思って近寄ってみると、10cm前後の角張った流紋岩がジグソーパズルのように集まり、それらの間をもっと細かい流紋岩の粒が埋めている。他のものはふくまれていない。
 これはハイアロクラスタイトという岩石。溶岩が水底で噴出すると、水で急に冷やされて粉々に砕ける。この砕けた破片が固まってできた。

 尾根のハイアロクラスタイト

  さらに少し進むと、分岐があった。まっすぐ南へ向かっている巡視路とここで分かれ、東への尾根を登る道へ進んだ。
 道の両側にはシャクナゲが連なって生えていた。花の咲く頃なら、ここはどれほどきれいだろう。
 
 西雄岳の山頂は、木々が伸びて展望がなくなっていた。16年前、岩の上の枯れた木の横からあたりがぐるりと見渡せたのを思い出す。山頂には、たくさんの新旧の山名プレートや道標がかけられていた。

西雄岳山頂

 山頂から下る急坂には、短いロープがつけられていた。木々の途切れたところから、南東に竜ヶ岳、篠ヶ峰、岩屋山が見えた。
 木漏れ日の尾根道は気持ちがいい。ツルシキミが赤い実をつけていた。

 奥雄岳の三角点も木漏れ日の中にあった。北風が吹き抜け、ソヨゴの葉がその名のとおり風にそよいだ。タンナサワフタギの葉は、どれも小さな長細い穴が開いていた。
 奥雄岳から、スギ・ヒノキ林を進んだ。シコクママコナが咲いていた。ツルシキミが地面に広がっていた。

 涸沢山は、一本の大きなアカマツの下。新しい山名プレートがかかっていた。

 北雄岳は、縦走ルートから少し離れたヒノキ林の中。分岐からひと登りする。

 尾根の小道を何度かアップダウンしながら北へと進んだ。ケアクシバが赤い実を一つ、一番上の葉に乗せていた。
 コルには、神河町側から林道が上ってきていた。
 道には落ち葉が積もり、岩も出ていないので、どんどん進めた。
  

ケアクシバ 快適な尾根道

 急な坂をひと登りすると、南岳。赤い実をつけたナナミノキの樹肌に風格があった。
 
 ゆるく下って登り返すと、中岳。最近何かイベントがあったようで、「WATER BOX」と書かれた給水用のラックが残されていた。

中岳山頂

 槍ヶ峰山頂は切り開かれていたが、周囲の木々が伸びていた。コナラやウリハダカエデやリョウブの葉が、ところどころ色づき始めている。ナツハゼやタンナサワフタギが実をつけていた。
 木々の間から、南の山々が見えるところがあった。今日最初に登った西雄岳の右に、またに山と千ヶ峰が、逆光に浮かび上がっていた。二頭のミドリヒョウモンが、しばらく山頂を舞った。

 槍ヶ峰山頂 槍ヶ峰山頂付近から南を望む 

 加美アルプスの縦走路は、ここから北の三国岳へと続いている。縦走路と別れ、西へ進んだ。尾根に建設中の森林基幹道が迫っていて、崩れているところがあった。
 狭くなった尾根を一山越して下ると、「帰去来」の石碑のある貝坂峠に達した。

貝坂峠
山行日:2023年9月29日

スタート~西雄岳(850m)~奥雄岳(842.2m)~涸沢山(790m)~北雄岳(800m)~南岳(790m)~中岳(807.8m)~槍ヶ峰(840m)~ゴール(貝坂峠) map
 スタート地点から西雄岳の手前まで、送電線巡視路を利用する。西雄岳から槍ヶ峰への加美アルプス縦走路は、尾根に沿って歩きやすい道が続いた。山名プレートや道標も多い。
 槍ヶ峰から貝坂峠までは、一部で道が消えていた。
 ゴール地点に置いていた自転車で、林道をスタート地点まで戻った。林道は荒れていて、車で通るのも、自転車で下るのもスリルがあった。

山頂の岩石 白亜紀後期 生野層 流紋岩・デイサイト質溶結火山礫凝灰岩
デイサイト質溶結火山礫凝灰岩
(槍ヶ峰西 左右30mm)
 西雄岳から涸沢山には、流紋岩が分布している。全体的に風化していて、淡いピンク色~オレンジ色をしている。一部で、流理と球顆を観察できた。
 西尾岳山頂西では、流紋岩の角礫がジグソーパズルのように集まったハイアロクラスタイトが見られた。
 奥雄岳山頂西では、自破砕構造が観察できた。
 涸沢山山頂の南では、斜長石・カリ長石・石英の結晶に富む球顆流紋岩が見られた。

 北雄岳から槍ヶ峰には、デイサイト質で弱溶結の火山礫凝灰岩が分布している。斜長石・カリ長石・黒雲母の結晶片、流紋岩・黒色頁岩の岩石片をふくんでいる(写真左)。
   

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