男明神・女明神の球顆流紋岩 (たつの市誉田町) 1.男明神・女明神 たつの市の小高い山の中腹に、男明神・女明神と名づけられた巨岩がある。2つの明神は、ともに標高約110mで、谷を隔てて東西に約300m離れている。 両明神とも、ふもとの里からも見える大きな岩で、名に明神とつくことから、磐座として古くから崇められていたと思われる。 今回、西はりまリハビリテーションセンター奥の登山口から男明神、女明神と巡り、これらの岩石を調べてみた。 2.男明神・女明神の球顆流紋岩 男明神・女明神ともに同じ特徴をもった流紋岩からできている。岩石の表面には、黒や緑や白の蘚苔類がついているが、内部の岩石は淡紫色〜淡褐色である。
女明神の下で、岩体からはがれ落ちていた岩石をハンマーで割り、内部を観察した。 岩石の色は、淡紫色〜淡褐色。球顆が多くふくまれている(標本1)。ガラス質で緻密な部分と、結晶が多くてがさがさした部分が交じって不均質である。標本2で、中央の褐色の部分がガラス質緻密な部分である。 斑晶は、石英と長石が認められる。長石は、最大2mmで淡いピンク色。石英は、最大2mmで、融食したものも観察された。
3.球顆の構造 球顆は1cm程度のものが多い。内部は、微小な石英が埋めている。また、内部が空洞になっているものも多く、このような球顆では小さな水晶が空洞の壁に晶出している(写真下の右)。 この流紋岩に明瞭な流理構造は観察できないが、球顆の周囲に縞模様が同心円状にできていることがある(写真下の左)。
4.周囲との関係 男明神と女明神は、東西に約300m離れている。今回歩いたルートで、球顆流紋岩が見られたのは、この2ヵ所だけであった。 これ以外の部分には、淡緑色の火山礫凝灰岩が分布していた。弁慶の足跡も大きな岩石の頂部であるが、女明神からわずかに離れたこの地点も淡緑色の火山礫凝灰岩であった。 また、谷口池北の道沿いの露頭では、火山礫凝灰岩に黒色頁岩の薄層がはさまれているのが観察できた。 以上の観察から、男明神と女明神をつくる流紋岩は東西に走向を持つ岩脈として周囲の火山礫凝灰岩中に貫入したものと考えられる。 「5万分の1地質図幅 龍野地域の地質(地質調査所 2000年)」によると、ここに分布しているのは白亜紀後期の伊勢層の流紋岩火山礫凝灰岩である。また、ふもとの谷口池付近に分布しているのは、伊勢層の角礫岩(岩屑なだれ堆積物)である。その中に男明神と女明神を結ぶ東西方向に、貫入岩体が分布している。 山行記録は「たつの市笹山の男明神・女明神」を参考にしてください。 ■岩石地質■ 球顆流紋岩(白亜紀後期) |