香福橋の黒い岩
 国道312号線、姫路市香寺町と福崎町との境界で市川に架かる「香福橋」のたもとに黒い岩盤が露出している。
 この岩石は、頁岩と砂岩を主とする混成岩で、ジュラ紀に海洋プレートの沈み込みによって付加した地質体である。
 国道に面しているため、このあたりでは地層と言えばまずこの露頭を思い浮かべる人が多い。以前は裏側にまわると岩石が良く観察できたが、その部分もコンクリートで塗り固められたため、今は岩体の南側を観察できるのみである。


※ このページは、1998年3月に「香福橋の丹波帯」としてアップしたものを、2003年7月に再調査の上、書き換えたものです。                           

海洋プレートの沈み込みによって形成された地質体
 左の写真は、黒色で劈開の発達した(うすくはがれやすくなった)頁岩中に、レンズ状に入り込んだ砂岩(長径60cm)のブロックである。砂岩は塊状で硬く、その部分が周囲より盛り上がっている。砂岩以外にチャートや緑色岩(玄武岩)が頁岩中に含まれている(緑色岩は、転石として観察)。
 このような岩石は、混在岩と呼ばれている。混在岩は、海洋起源の緑色岩やチャートなどがプレートの運動によって沈み込む際に、陸源の砕屑物(後の、砂岩・泥岩・頁岩・粘板岩など)と混合してできた岩石である。

 緑色岩・チャート・砕屑岩から成る層序をもち、混在岩の存在を特徴とする地層を、「堆積岩コンプレックス」と呼んでいる。堆積岩コンプレックスは、海洋プレートが沈み込むときに付加してできた「付加体」である。

 香福橋のこの岩体は、尾崎・栗本・原山(1995)によって命名された八千種コンプレックスにあたり、丹波帯U型地層群の構造上上位の地層とされている。
 
堆積岩コンプレックスをつくる岩石
 左の写真は、この混在岩の基質である頁岩である。黒色で、鱗片状の劈開が発達している(薄くはがれやすくなっている)。
 岩体中には、岩石がすべり動くことによってできる鏡面光沢が見られる部分があり、すべり動いた方向にできる擦り傷「条線」が観察される。
 白い脈が小さく途切れながら入っているが、これは石英の場合と方解石の場合がある。石英は透明感があり、ハンマーでこするとハンマーの鉄粉がつく。方解石は乳白色で、ハンマーで傷がつき、持ち帰って塩酸をかけると気体(二酸化炭素)が発生した。
 
 左の写真は、混在岩中の砂岩の部分である。このあたりは、基質の頁岩より砂岩の方が量的に多くなっている。
 頁岩も砂岩も表面が真っ黒なので一見して区別がつかないが、頁岩には劈開(うすくはがれやすくなった面)が発達しているのに対して、砂岩は塊状である。岩石を割ってみると、砂岩は灰色で頁岩より色が薄く、その粒度から砂岩であることが分かる。砂岩は、珪質で硬い。
 
 砂岩以外には、径数10cmの淡緑色のチャートが混じっている。岩体下に崩れ落ちた岩屑には、方解石の脈が入り込んだ緑色岩が混じっていた。

■岩石地質■ 頁岩・砂岩を主とする混成岩  (ジュラ紀 丹波帯地層群八千種コンプレックス)
■ 場 所 ■ 姫路市香寺町(国道312号線、香寺町と福崎町の境界付近「香福橋」の西詰め) 25000図=「前之庄」
■探訪日時■ 2003年7月21日、他

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