駒 ヶ 岩

市川左岸に横たわる、柳田國男も遊んだ巨岩


 『柳田國男は、「故郷七十年」のなかで、「市川の川ぷちに駒ヶ岩というのがある。今は小さくなって頭だけしか見えていないが昔はずいぶん大きかった。高さ一丈もあったであろう。それから石の根方が水面から下へまた一丈ぐらいあって、蒼々とした淵になっていた。」と遠い昔をなつかしんで書いている。夏になると國男少年兄弟は、この岩の上で衣を脱いで、そばの淵で水泳ぎをしたり、うなぎの枝釣りをして遊んだ。……(後略)。』と、福崎町観光協会によって記された案内板が、この岩のそばに建っている。
 岩石は、丹波層群(「北条図幅」では若井コンプレックス)の砂岩頁岩の互層である。砂岩優勢であるが、層厚5〜20cmで細かく互層している部分もある。岩体全体、特に砂岩は珪質であり、緻密で硬い。このため、長年にわたる市川本流の河食に耐えて、大きな岩体として横たわっている。



写真:駒ヶ岩

水面から7〜8mの高さがある。岩の上に立って、下をのぞき込んでみると、水面下2mまで岩体が続いていることが分かるが、それより下は水の中に消えている。
 「この岩の上に、神馬のひずめのあとが残っていて、鈴の森明神が神馬に乗って、駒ヶ岩から古宮へ飛ばされたという言い伝えがある。」と、案内板にある。岩体の上には、割れ目に沿った三角形の穴がいくつか開いている。これが、神馬のひずめの跡であろうか。



写真左:砂岩頁岩の互層
     黒っぽい層が頁岩、灰白色の層が砂岩である。砂岩は、レンズ状に頁岩にとり込まれている場合がある。

写真右:頁岩に取り込まれたチャート
     頁岩中には、レンズ状にチャートが含まれている。大きさは30cm程度である。

■岩石地質■ ジュラ紀 丹波帯若井コンプレックスの砂岩頁岩互層
■ 場 所 ■ 神崎郡福崎町南田原 25000図=「北条」
■ 交 通 ■ 播但連絡道路福崎北インターを下車して西へ 神崎橋の手前を右折して北へ ホームセンター「アグロ」の手前で左折すると、市川左岸に達する。案内板の前には、駐車スペースがある
■探訪日時■ 1999年8月10日


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