加古川下流の小石
小野市黍田町

 加古川は、東播磨全域、丹波南部、さらに六甲山系北部から水を集め、瀬戸内海に注いでいます。
 長さ96km、流域面積1730km、どちらも兵庫県でいちばんの大きな川です。
 
 中流部には、闘龍灘などの急流がありますが、下流部は流れが緩やかで、今回の採集地点付近には小石の川原が大きく広がっています。

 広い流域を流れる加古川の小石は、流域の多様な地質を反映して、その種類が豊富です。
 小石の中でよく目立つチャートは、上流域の丹波市あたりに分布している丹波帯の岩石です。流紋岩や溶結凝灰岩は、中流域に広く分布している白亜紀後期の火山活動によってできた岩石です。また下流域の神戸層群や大阪層群からは、砂岩や泥岩、凝灰岩などの堆積岩が運ばれてきます。

 小石の採集地点は、JR加古川線市場駅から500mほど歩いた加古川の右岸。万歳橋の下流にあたります。

泥 岩

 平たくて丸い小石です。濃い灰色のものと、薄い褐色もものがあります。
 海や湖の底にたまった泥が固まってできた岩石で、粒子が小さいため手でさわるとすべすべしています。
 硬い泥岩は、黒いチャートによく似ています。カッターナイフで傷がつけば泥岩です。チャートは傷がつきませんが、泥岩でも硬いものは傷がつかないので注意が必要です。

砂 岩

 平たく丸い形をしています。薄い褐色や薄い灰色をしています。
 海や湖の底にたまった砂が固まってできた岩石で、粒子が大きいため手でさわるとざらざらしています。
 直線状や破線状のくぼみが入っていることがあります。

チャート

 丸いものもありますが、四角や三角ものが多くごつごつとしてます。色は、白、黒、灰色、赤、緑オレンジ色などさまざまです。
 硬いことが特徴で、カッターナイフでも傷がつきません。
 深い海の底に、放散虫の死骸などがたまり固まってできた岩石です。
 表面をルーペで見ると、小さな丸い放散虫の化石が見つかることがあります。

 下の写真は、赤いチャートの表面を双眼実体顕微鏡で撮影したものです。
 丸くて赤色の濃いところが、放散虫の化石です。
 放散虫の大きさは、直径が0.2〜0.4mmです。小さいですがルーペでもはっきりと見ることができます。
 (写真横 1.6mm)

凝灰岩

 丸い形をした、薄い灰色や薄い緑色の小石です。川原の中では、白っぽく見えます。
 凝灰岩は、火山灰が固まってできた岩石です。
 ここで見られる凝灰岩は、ざらざらしていて、手でこするとぼろぼろと表面からくずれていきます。
 粒の荒いものをルーペで見ると、白い鉱物(石英や長石)、黒い鉱物(黒雲母や角閃石)を火山ガラスが変質した白い粘土鉱物が埋めているようすがわかります。
 また、きらきら光る小さな白雲母がふくまれるものもあります。
 

溶結凝灰岩

 平たく丸い形をしています。薄い褐色、オレンジ色、灰色などの色があります。
 火山灰が固まった細かい基質の中に、目で見える大きな粒がたくさん入っています。この大きな粒は、火山礫(マグマが冷えて固まった岩石の破片)や石英や長石や黒雲母などの結晶です。
 軽石が押しつぶされてできたレンズのように細長く伸びたものが見られるのが特徴です。
 この岩石は、火山が噴火して起こった火砕流によってできました。
 この川原で、いちばんたくさんあるのがこの溶結凝灰岩です。

赤色溶結凝灰岩

 丸い形をした赤い小石です。
 赤い基質の中に、石英、長石、黒雲母、角閃石の結晶が見られます。
 石英の結晶は、透明でガラス光沢があり、赤く見えるものが多くあります。黒雲母と角閃石は変質しています。
 火山岩のように見えますが、よく観察すると泥岩などの岩片をふくんでいたり、軽石が押しつぶされたレンズが見られるものもあるので、溶結凝灰岩であることがわかります。
 

流紋岩

 白や薄いオレンジ色や薄い褐色をしています。
 流紋岩は、マグマが地表や地下の浅いところで冷えて固まった岩石です(火山岩)。
 石の中に見られる粒は、石英や長石の結晶です(斑晶)。石の中に縞模様が見えることがよくありますが、これは流理構造といってマグマが固まるときの流れが表れたものです。

花こう岩
(花こう岩・花崗閃緑岩・石英閃緑岩)


 丸い形の、黒と白のまだら模様をした小石です。
 花こう岩は、マグマが地下深くでゆっくり冷えて固まった岩石です(深成岩)。そのため、どの鉱物も大きく成長しています(等粒状組織)。
 白色は主に斜長石でカリ長石も少しふくまれています。灰色透明は石英、黒色は黒雲母か角閃石です。
 花こう岩に比べると、カリ長石や石英が少なく、黒い鉱物が多くなると、花崗閃緑岩や石英閃緑岩になります。加古川では、花こう岩より花崗閃緑岩や石英閃緑岩の方が多く見られます。
 

花こう斑岩

 丸い形の、緑と白のまだら模様の小石です。
 白い粒は、主に斜長石の結晶です。緑色の部分は、目で見えないほど小さな結晶が集まっています。
 花こう岩と同じマグマが、花こう岩より浅い地層の中に入って冷えてできたと考えられます。
 

緑色岩

 丸かったり角張っていたり、いろいろな形があります。
 緑色岩は、海底に玄武岩のマグマが噴出してできた岩石で、海水との反応によって緑泥石や緑簾石などの鉱物ができました。
 この川原では、わずかに見られるだけです。

変はんれい岩

 舞鶴帯の夜久野岩類に見られる岩石です。
 もとは斜長石と輝石から成るはんれい岩ですが、変形・変成作用を受けて鉱物が同じ向きに並び弱い縞模様となっています。また、輝石は変質して角閃石などの鉱物に変わっています。
 源頭部に近い粟鹿山の北あたりから流れてきたと思われます。

石英
 
 丸くて真っ白な小石です。小さな石英の結晶が集まってできていて、透明感があります。
 硬くて、カッターナイフで傷がつきません。
 石英脈として産出したものです。小石に溝のような空隙があると、そこに水晶の結晶が見られるかもしれません。


 その他に、角閃石の斑晶が特徴的な安山岩などが見られました。

小石の採集日:2016年7月18日

「兵庫の山々 山頂の岩石」 TOP PAGEへ  地質岩石探訪へ