佐用町上三河の変はんれい岩
千種川右岸に広がる変はんれい岩の露頭(佐用町上三河)

 千種川に沿って県道72号線を北へ走ります。上三河(佐用町)の集落を抜けると、県道から千種川の右岸に緑色の大きな岩盤が見えます。
 岩盤の大きさは、長さ30m、幅20m程度で、ゆるく川の中央に向かって傾いています。
 この大きな岩盤はどのような岩石でできているのでしょうか。道路から川に下りて、この岩石を観察してみましょう。

1、変はんれい岩

 ここには舞鶴帯の夜久野岩類が分布しています。上三河に露出するこの緑色の岩は、細粒の変はんれい岩です。主に輝石と角閃石と斜長石から成っていますが、低度の変成とその後の変質を受けているため、緑泥石など他の鉱物に変化していると思われます。輝石や角閃石の間を斜長石が埋めているつくりが、肉眼でも観察されます。

変はんれい岩 変はんれい岩の表面を拡大

2、変はんれい岩中の鉱物脈と断層

 岩盤の上に立ってまず気づくのが、いろいろな方向に入っている白い鉱物脈です。乳白色のものが方解石脈、灰白色のものが石英脈です。また、緑色の緑簾石の脈も観察することができます。

方解石脈 緑簾石脈

 この変はんれい岩の岩体は、ところどころで小さな断層によってずれ動いています。断層に沿って、巾20cm程度の破砕帯ができていたり、ずれ動いたところが鏡肌となって蛇紋岩のように見えるところがあります。このような断層があることから、この岩石ができてから今までに大きな力が加わったことが分かります。

小断層に伴う破砕帯 滑り面の鏡肌

3、舞鶴帯夜久野オフィオライトの形成

 上三河の変はんれい岩は、「夜久野岩類」の一部にあたります。夜久野岩類は、福井県西部から京都府北部、兵庫県中央部を経て、岡山県東部にいたる舞鶴帯の中に断片的に分布しています。
 夜久野岩類は、「夜久野オフィオライト」とも呼ばれています。オフィオライトというのは、かんらん岩、はんれい岩、玄武岩が下から上へ層状に重なった岩体で、過去の海洋地殻とその下のマントルが地表に露出したものです。オフィオライトの岩石の多くは、海洋底や造山帯で変成作用を受け、蛇紋岩や変はんれい岩・変玄武岩などになっています。
 夜久野オフィオライトは、岩石の種類や化学組成、Sr同位体組成比などから、島弧地殻の下部あるいは島弧に沿った縁海の地殻として形成されたものと考えられています。約3億年前(石炭紀)の遠い昔、島弧や縁海の地殻として形成され、それがその後のプレートの動きによって上昇し、アジア大陸(当時の日本はまだアジア大陸の東縁にあった)に付け加わったのです。

 千種川の流れは、この岩盤と護岸の間を勢いよく流れ、その下のトロに向かっています。トロの上には両岸から大きな岩がせり出し、峡谷のような景観をつくっています。訪れた日には、藤の花が咲き、ときどきその匂いが風に乗ってやってきました。


■岩石地質■ 石炭紀〜ペルム紀 舞鶴帯 夜久野岩類 変はんれい岩
■ 場 所 ■ 佐用町上三河 25000図=「土万」
          県道72号線沿い千種川右岸
■探訪日時■ 2009年5月5日


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