生野銀山文化ミュージアム    朝来市生野町
生野銀山の歴史と鉱物
生野銀山文化ミュージアム
 史跡生野銀山の生野鉱物館に、2011年3月「生野銀山文化ミュージアム」がオープンしました。
 これは、生野鉱物館から和田コレクションが引き揚げられたために、そのスペースを利用してつくられたものです。
 館内には、生野鉱山の歴史と鉱山町としての地域文化を解説した展示パネルがぐるりと並べられています。
 また、全国から集められた大型の鉱石標本や、生野鉱山の鉱物を数多く含んだ藤原寅勝コレクション609点、小野治郎八コレクション155点の鉱物標本が展示されています。

 『生野鉱物館、かつての「和田コレクション」』へ

 世界に誇る銀鉱山

 展示は、『世界に誇る銀鉱山「生野銀山」』の大パネルから始まります。
 生野銀山は、平安時代の807年(大同2年)に発見されたと伝えられています。江戸時代は銀山として、佐渡金山、石見銀山と共に幕府の財政を支えました。江戸時代後半には、石見銀山、院内銀山、多田銀山などと合わせると、日本で産出された銀は世界の3分の1を占めたと言われています。
 明治になると、新政府の財政を支える官営鉱山として開発が進められました。1896年(明治29年)に三菱合資会社に払い下げられてからも、金・銀・銅から銅・鉛・亜鉛・錫に生産の中心を移しながら、1973年(昭和48年)に閉山するまで日本の経済発展を支え続けてきました。

館内の展示

 展示は、大きく「生野鉱山の歴史」、「鉱山の科学」、「生野鉱山の地域文化」に分けられています。写真や絵、表やグラフも多くて、子供たちにもわかりやすいように工夫されています。
 また、生野鉱山産出の73種の鉱物一覧や、鉱山で実際に使われていたハンマーや長靴、ヘルメットやランプも展示されています。
展示内容
1 生野銀山の歴史
        銀鉱脈発見から江戸時代まで
   銀鉱脈発見・開発のはじまり
信長・秀吉を支えた生野の銀
江戸時代の貨幣制度を支えた銀
近代化から払い下げまで
明治時代の新政府を支えた銀
生野で活躍したフランス人技師たち
日本初の鉱山学校
世界レベルの生野製鉱所
三菱への払い下げから閉山まで
日本を代表する鉱山として再生
2 鉱山の科学
鉱床と生野鉱山
鉱床の生成
日本の鉱床:生野鉱山
探鉱・採掘から製錬まで
探鉱と採掘
選鉱
製錬
3 生野鉱山と地域文化
鉱山町の人々
人々の活気
鉱山町の暮らし
福利厚生・文化活動
伝統芸能・町民活動
鉱山町としての文化的景観
生野の街並み
鉄道と鉱石運搬風景
鉱山施設の景観
生野鉱山と文学
文学作品に登場する生野

 全国から集められた大型の鉱石標本

 全国の鉱山から集められた大型の鉱石標本が約50点展示されています。日本の鉱山はほとんどが閉山しているので、どれも新たに採掘することができない貴重な標本です。

全国から集められた鉱石標本

 展示されているのは、北海道知床鉱山の硫黄鉱、下川鉱山の含銅硫化鉄鉱、千歳鉱山の金銀鉱、八雲鉱山のマンガン鉱、岩手県野田玉川鉱山のマンガン鉱、秋田県小坂鉱山の黒鉱、新潟県佐渡鉱山の金銀鉱、鳥取県日野上鉱山のクロム鉄鉱、鹿児島県串木野鉱山の金銀鉱などです。

マンガン鉱(八雲鉱山) 錫・タングステン鉱(明延鉱山)

 生野鉱山産の鉱物が手にとって観察できる

 机の上に3つの標本箱が置かれ、照明に浮かび上がっていました。これら54個の鉱物標本は、いずれも生野鉱山で採集されたもので、三菱OBの中寺幸雄氏と山下睦生氏が収集し寄贈されたものです。
 机にはルーペも置かれていて、一つ一つの標本を手にとって観察することができます。

手にとって観察できる54点の鉱物標本

 赤鉄鉱は、板状結晶が放射状に集合しています。
 脆安銀鉱(脆銀鉱あるいはステファン鉱とも呼ばれる)は、長さ2cmの柱状結晶。赤みのある黒色で、部分的に鮮やかな赤色を呈しています。柱面に平行な劈開や条線があって、金属光沢を有しています。
 自然蒼鉛(ビスマス)は、淡くオレンジ色がかった暖かみのある鉛色で、薄い板状結晶が重なっています。
 安四面銅鉱には、黝銅鉱(ゆうどうこう)という古い名前がつけられていました。黒色、塊状で、つやがあって一見すると粘板岩のように見えます。
 コバルト華は、針状の微小結晶が球状に集合しています。ピンク色をしていて、ルーペで見るとチャーミングです。
 蛍石方解石が、一つの標本の中で背中合わせになっています。蛍石は、最大12mmの六面体結晶が重なっていて、淡い緑色をしています。方解石は、釘頭状の結晶形をしていて最大5.5cmもありました。
 蒼鉛銀鉱とされているのは、マチルダ鉱(AgBiS)のかもしれません。
 錫石は、褐色を帯びた微小結晶が塊状に集合したもので、表面が少しガサガサした感じがします。このような塊状の錫石は、濃紅銀鉱と共にいつも私の鑑定眼を悩ませます。
 インジュウム鉱とされているのは、銀黒色、塊状で樹脂光沢を有し、黄銅鉱と共生しています。インジウム銅鉱、あるいは桜井鉱かもしれません。
 その他、標本箱には自然金黄銅鉱方鉛鉱硫砒鉄鉱鉄マンガン重石などが入っていました。

赤鉄鉱 脆安銀鉱(ステファン鉱)
黄銅鉱 コバルト華

 藤原寅勝コレクション

 藤原寅勝コレクションは、生野鉱山で大正11年から41年間にわたって地質・測量に勤務した藤原寅勝(とらかつ)氏によって収集された鉱物標本609点です。
 日本全国から集められた鉱物が展示されていますが、それだけではなくパキスタンの藍銅鉱、メキシコのモリブデン鉛鉱、インドカシミールの鋼玉(コランダム)など、海外の鉱物も含まれています。

藤原寅勝コレクション

 生野鉱山は、約70種に及ぶいろいろな鉱物を産する鉱山として有名ですが、生野鉱山産出の鉱物として約90点が抽出展示されています。この中には、生野鉱山で初めて発見された鉱物、生野鉱桜井鉱も含まれています。

桜井鉱(生野鉱山千珠本ひ) 方解石(生野鉱山千珠前ひ)

 小野治郎八コレクション

 小野治郎八コレクションは、戦後採鉱課長として生野鉱山に赴任し、その後昭和33年から36年にわたって生野鉱業所所長を務めた小野治郎八氏がによって収集された鉱物標本155点です。

小野治郎八コレクション

 日本産の鉱物が中心ですが、朝鮮の三光鉱山や青岩鉱山の金銀鉱、台湾の金爪石鉱山の硫砒銅鉱など海外の鉱物も含まれています。
 生野鉱山産の鉱物としては、菱鉄鉱自然銅ソーダ沸石(ナトロライト)などがあります。ソーダ沸石は、淡いピンク色で針状〜柱状の結晶が集合しています。また、鉱床の母岩である玄武岩の標本もありました。

菱鉄鉱(生野鉱山) ソーダ沸石(生野鉱山)

「史跡生野銀山」のホームページへ
■ 場  所 ■ 兵庫県朝来市生野町小野33-5  TEL 079-679-2010
          <JR>JR播但線「生野」駅から約5km
          < 車 >播但連絡道「生野」または「生野北第1」下車 
■ 開  館 ■ 4月〜10月; 午前9時〜午後5時30分
11月; 午前9時〜午後5時
12月〜2月; 午前9時30分〜午後4時30分
3月; 午前9時30分〜午後5時
■ 休  館 ■ 年末年始 12月30日〜 1月2日
           定休日  12月〜2月の毎週火曜日
■ 入館料 ■ 100円
■ 探訪日 ■ 2012年2月25日

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