市川町の水晶を巡って
 透明で結晶面がきらりと明るく光る水晶は、いつの時代でも子供たちの心をひきつけます。理科室には、水晶の結晶がいくつかありますが、どれも地元の市川町で生徒たちが採集してきたものです。
 夏休みの1日、そのような水晶の産地を生徒たちと一緒に巡りました。

水晶(石灰山、写真横5mm) 水晶、高さ7mm・幅5mm(石灰山、写真横8mm)

石 灰 山 へ

道で見つけた水晶を採集
 まずは、村田君と正木君の案内です。
 市川町上田中の公民館前で道を南に折れ、岡部川に架かる「石灰山橋」を渡ると、道が山の中へ入っています。道の下には、風化した頁岩が露出しています。これは、丹波帯の岩石です。一部に層状チャートも見られます。
 道を少し上ったところで、先を歩く村田君が石を割り始めました。「あった!」早速、村田君が水晶を手にしました。見ると、石のかけらに大きさ数mmの水晶がいくつも群がって付いています。
 水晶は、その道の土の中に半ば埋もれて転がっている転石の中から出てくるのです。私も正木君も、村田君に続いて水晶をいくつか採集することができました。
 水晶は、錐面をのせた柱面が細粒の石英に埋もれるという一般的な形で、最大のものは高さが8mmありました。無色透明なものが多いのですが、内部が乳白色のものもあります。
 転石の種類は、ほとんどが褐色を帯びた灰色の石灰岩。方解石の小さな結晶が見えるところもあります。この石灰岩は、丹波帯の頁岩にブロック状にとりこまれているもののようですが露頭は確認していません。水晶の結晶は、この石灰岩中に貫入した石英脈の空隙に成長していました。
 犬の散歩にこのあたりを歩いていた人が、たまたまここの水晶を見つけたそうです。その人に水晶をもらった子がいて、村田君はその話を聞いていたのです。
 ただ、産出する量が少ないので、今後は土を掘り返すか石英脈のある石灰岩の露頭を見つけないと採集できないと思います。
水晶が集合した標本(横8cm) 水晶(石灰山、写真横12mm)
水晶(石灰山、写真横13mm) 小さな晶洞中の水晶(石灰山、写真横12mm)

神 崎 山 へ

あきらめて引き返す
  続いて、大坪君と山下君の案内で坂戸の裏山に向かいました。
 この山を神崎山と言いますが、昔この山の頂上近くで子どもたちが水晶の結晶を拾ったそうです。大坪君がその話をお父さんから聞いていました。
 ふもとの姫宮神社で弁当を食べた後、3人で山道を上っていきました。
 しかし、道はしだいに狭くなり、そのうちシカの防御ネットにふさがれました。ネットに沿って回り込むと、ゲートがあったのでそこから中に入ったのですが、道はそのうち完全になくなり、雑木や夏草の生い茂るヤブに行く手をはばまれてしまいました。
 雨もぱらつき始め、ここで断念です。そこに露出している丹波帯の風化した頁岩を観察し、ハンマーでたたいて標本を採って下山しました。
 大坪君、山下君、また挑戦しましょう。
城 山 へ

城山の水晶を求めて
 最後は、草刈君と元木君と一緒に城山へ上がりました。
 ここに水晶が出ることは生徒たちの間ではよく知られていて、理科室にあるいくつかの水晶も生徒たちがここで採ってきた水晶です。
 スポーツセンターの裏から長い石段を上り、達した尾根を少し下ると石の祠の中に石仏が立っています。この周辺の地面のところどころには、丹波帯の頁岩が露出していますが、この中に石英の脈があってその中に水晶の結晶が出ます。
 石英の脈はすぐに見つかったのですが、いい水晶の結晶はあまり見つかりませんでした。ここも産出が限られているので、もうほとんど採り尽されているようでした。それでも、水晶の結晶が集合したものをいくつか採ることができました。

 市川町に水晶の結晶が出るところは、そう多くありません。案内してくれた生徒たちに感謝するとともに、自然への関心をこれからも大切にして欲しいと思いました。

頁岩中の石英脈(ハンマーの左、縦方向) 水晶(城山、写真横5mm)

■ 場 所 ■ 市川町内3地点 25000図=「北条」
■探訪日時■ 2006年7月29日 

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