市川の川原の石から大地を学ぶ
香寺中学校は、夏休みに「夏季実験観察講座」が行われています。2005年の今年、私は8月2日に地学分野『市川の川原の石から大地を学ぶ』を担当しました。参加者は、2年生6名、3年生2名の生徒8名と、香寺中学校の荻野先生。今回は、市川の川原の石を採集して、岩石ミニ標本をつくりました。
今回の講座で使用したプリント
1、まずは、理科室で大地の学習です フィールドに出かける前に、このあたりの大地の成り立ちを学習しました。
このあたりの古い地層は、超丹波帯や丹波帯と呼ばれている付加体の岩石でできています。超丹波帯は、主に古生代ペルム紀の付加、丹波帯は主に中生代ジュラ紀の付加によってできました。
岩石の種類は、緑色岩・チャート・頁岩・泥岩・砂岩など。どれも遠い海の底でできた岩石が、プレートにのって移動し、海溝から沈み込むときにはぎ取られ、大陸に付け加わった(付加した)岩石です。
後期白亜紀には、この地域で大規模な火成活動が起こりました。地上では、火山の噴火によって火砕流が発生し、溶結凝灰岩が厚く堆積しました。また、流れ出した溶岩は、流紋岩や安山岩になりました。
火山の噴火によって地下のマグマだまりが空洞になると、地面が陥没してカルデラができました。カルデラには水がたまって湖となり、そこには礫岩・砂岩・泥岩が堆積しました。また、地下で冷え固まったマグマは、花こう岩などの深成岩となりました。
まだまだ、日本列島の姿はなく、日本が当時のアジア大陸の東の縁にくっついていたころのできごとです。
中学生には、少し難しいところもありましたが、標本の岩石などを見ながらしっかり学習できました。
2、いよいよ、フィールド!市川の川原で小石を採集しました 2台の車で、「市川ゴルフ」横の市川右岸の川原へ。川原の少ない市川では、とっておきの場所です。ここへ来るには「市川ゴルフ」の敷地を通るので、事前に許可が必要です。
川原の小石を観察して採集しました 川原には、20〜30cmの丸い石がゴロゴロしています。どれも、昨年の台風による増水でここへ運ばれてきた石です。
大きな石は観察だけにして、大きな石の間に転がっている小さな石をミニ標本用に集めます。生徒たちは、すぐに石を探し始めました。表面を見るだけでは分からない石は、ハンマーで割って中の新鮮な部分を観察します。
「これ、何ですか?」と生徒たちは、なかなか難しい石をもってきました。普段から石を調べている私たちは、新鮮で名前のつけやすい石に注目してしまいます。しかし実際には、風化や変質をして、もとの石が何であるのか分からない場合が多いことに、このとき気づかされました。
チャートと石英脈と珪化した凝灰岩は、どれもよく似ています。風化した安山岩と、同質の凝灰岩の区別もなかなかつきません。
生徒たちがやっきになって探しているのは、石灰岩。この石を見つけると、荻野先生からジュースがもらえるのです。
1時間がすぐにたちました。暑さに一番先に根をあげたのは……荻野先生?ゴルフボールを、お父さんへのお土産にとひろった子も……。
3、教室に帰って、標本づくりに挑戦です 教室に帰って、持ち帰った石をまず水で洗ってきれいにします。扇風機の風やドライヤーでかわかして、石に名前をつけます。同じなかまの石を見つけるのは、けっこうみんなよくできていました。
まずは水できれいに洗います 乾かして、石に名前をつけます ジュースのかかった石灰岩。白くてそれらしい石には塩酸をかけてみますが、泡はでません。泡の出るのは、ためしに持って帰ったコンクリートのかけらばかり。最後に、黒田君の見つけた白くて小さな丸い石。誰かが、これにも塩酸をかけてみようと言いました。すると、泡が出たのです。ついに、石灰岩の発見です。
塩酸をかけてみると…… 採集地より上流には、石灰岩の露頭は、ほとんどありません。白亜紀の溶結凝灰岩に取り込まれた基盤の石灰岩なのかもしれません。小高峯君が、「動物の骨かもしれない」とするどい発言です。
とにかく、石灰岩(炭酸カルシウム)がこうして見つかりました。
石に名前がつくと、その一つ一つにマジックで番号を書きます。標本カードに、番号に合わせてその石の名前を書き込んで、「岩石ミニ標本」の完成です。
朝の8時から4時間半。みなさん、ごくろうさんでした。これからも、石や地質に関心をもち続けて下さい。
4.「岩石ミニ標本」の完成で〜す
岩石ミニ標本(ケースは100円ショップで購入) 1、緑色岩 海底で噴出した玄武岩は、海水と反応して緑色の岩石となります。暗い緑色をしていることや、表面に丸い穴があいていることが見分けるポイントです。白い粒は、斜長石の斑晶です。
2、チャート 黒色と褐色のチャートです。硬いために、カッターナイフで傷をつけようとすると、逆にナイフの鉄の粉がつきます。縞模様が見られることがあります。
3、頁岩 黒色をしていることがほとんどです。頁岩は割れやすいので、小石は丸くならずに平たくとがった形になります。
4、泥岩 白と黒の細かい縞模様をつくっていることがよくあります。これは、粒の大きさの違いなど堆積したときのようすを表したもので、ラミナ(葉理)といいます。
5、砂岩 これも、ラミナがよく見られます。泥岩より粒が大きいので、さわってみるとざらざらした感じがします。黒色・灰色・茶色などの色をしています。
6、安山岩 斜長石の白い斑点(斑晶)がよく目だちます。石基の部分は、黒色・緑色・赤茶色などをしています。色の多くは、変質によるものです。
7、溶結凝灰岩 これもさまざまな見かけのものがあります。共通していることは、押しつぶされた軽石のレンズが見られること、石英の結晶片が含まれていること(流紋岩質のものが多い)、他の岩片を含んでいることなどです。
8、花こう岩 白・ピンク・黒がまだらになった岩石です。白は斜長石、透明感があって灰色をしているのは石英、ピンクはカリ長石、黒は黒雲母と角閃石です。
9、花こうせん緑岩 花こう岩と比べると、黒雲母や角閃石が多く、全体的に黒っぽく見えます。ここでは、花こう岩よりずっと多くみられます。
10、珪質岩 白く硬い岩石です。石英脈、あるいは流紋岩や溶結凝灰岩が珪化したものと考えられます。
1、緑色岩 2、チャート 3、頁岩 4、泥岩 5、砂岩 6、安山岩 7、溶結凝灰岩 8、花こう岩 9、花こうせん緑岩 10、珪質岩