島根半島瀬崎のひょうたん池 (島根県松江市) 瀬崎海岸は、島根半島の中でも最北端の近くにあって、荒々しい岩が表れています。「ひょうたん池」は、その海岸の波打ち際に、海の水をたたえて佇んでいました。 1.ひょうたん池へ ひょうたん池へは、瀬崎漁港から海岸を歩きます。道はありません。海に迫った崖の下に広がる波食棚の上を歩いていきます。波食棚は、海面すれすれなので、潮が引いているときを選んで訪れました。 波食棚をつくっているのは、集塊岩です。火山灰が固まった黄土色の基質の中に、黒い火山弾や火山岩塊がごつごつと飛び出しています。 火山弾や火山岩塊は安山岩質で、発泡によってできた穴がたくさん開いています。ふくまれている小さな白い粒は、斜長石の斑晶です。 瀬崎海岸に分布しているこの地層は、中期中新世の松江層(※1)にあたります。松江層は、島根半島に分布する地層の中では新しく(※2)、大陸から分かれた日本列島が現在の位置に移動したあとの火山岩類や堆積岩類から成っています。
火砕岩の岩壁の表面に、黒くて四角っぽい岩が塔状に集まっているところが見られました。これは、「崩落火道」とされているものです。 安山岩質の火砕岩の活動のあと、玄武岩の活動がありました。「崩落火道」なら、火道を埋めていた玄武岩質のマグマが冷えて固まったあと、火道が崩れてこのような姿になったことになります。 しかし、これは噴火活動の時に火道内で形成された「火道火山角礫岩」の可能性もあると思いました。
※1 鹿野ほか(1985)は、この地域の地層を松江層の同時期の地層として「高渋山層」としました。 ※2 瀬崎の安山岩溶岩から、11.0±0.7Ma(約1100万年前)のK-Ar年代が得られています(沢田,2018)。 2.ひょうたん池 瀬崎漁港から20分ぐらい歩くと、ひょうたん池に着きました。
瀬崎の水は澄んでいて、ひょうたん池の水面は空の青と雲の白を映していました。水面の下をのぞくと、内側の壁はオーバーハングしていて、深いところほど広くなっています。 底には、大きさ20〜50cmほどの丸い岩、ドリルストーンがいくつも転がっています。これらの石が、ひょうたん池の壁や底をここまで削りました。 大波がくると、ドリルストーンはポットホールの中を転がりまわってさらに穴を大きくしていきます。場合によっては、外から新しいドリルストーンが加わったり、ドリスストーンを卒業して穴から出ていったりします。 ひょうたん池が、ここまで大きくなるのに、どれぐらいの年月がかかったのでしょうか。水の中には、波にとり残された小さな魚がゆったりと泳いでいました。
■参考文献 八島隆一,1976,第三紀玄武岩の火道例.地球科学,30,241-250. 沢田順弘,2018,山陰中央部における白亜紀〜新生代火成岩類のK-Ar年代.島根大学地球資源環境学研究報告,36,15-33. ■岩石地質■ 集塊岩 約1100万年前(新第三紀中新世) 松江層 |