波打ち際に敷き詰められた色とりどりの小石。夏には海水浴場としてにぎわう洲本市の五色浜には、近くの地層から洗い出されたチャートや結晶片岩などの小石が波に打ち寄せられ、並んでいます。
小石の色は、白・赤・茶・黒・灰色などで、それに緑や黄も交じっています。波をかぶって小石がぬれると、それぞれの色が透明感をまして鮮やかになり、宝石のようにまぶしく陽の光をはね返します。
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海水にぬれた五色浜の小石 |
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五色浜の風景 |
車窓に播磨灘を見ながら、淡路島の西岸を車で走り、五色浜に着きました。淡路交通バス停「五色浜」の近くから、浜へ下りることができます。
訪れたときは、潮が満ちていたために、砂浜の幅はそう広くありませんでした。浜辺では、連休中の観光でしょうか、いくつかの家族連れが遊んでいました。
砂の上には、丸い小石がいく筋かの帯をつくって並んでいます。小石は大きさが2cm以下のものが多く、大きくても10cmまでです。大きなものは、護岸の下に集中していました。海の中にも、小石の並んだ帯が見えるので、潮が引くともう少し小石の風景が広がるのかもしれません。
小石の種類は、結晶片岩とチャートが多く、砂岩や泥岩などの堆積岩、花崗岩などの深成岩もそれらに交じっています。また、安山岩や緑色岩、凝灰岩も見られてなかなか多彩です。
これらの小石は、この海岸の裏手に広がる地層中から礫が波に洗い出されたものです。今は、護岸によって波による洗い出しが少なくなっていると思われます。波の寄せる海辺にきれいな小石の広がるこの風景を、いつまでも大切にしたいですね。
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波打ち際の小石 |
打ち寄せる波 |
五色浜の海岸から上がり、道路を渡って少し北に歩くと、大きな露頭があります。採土場として削り取られた崖のようですが、ここで五色浜の小石のみなもとが観察できます。
ここで見られるのは礫岩の地層で、含まれる礫の量や大きさの違いによって層理が見られます。礫の大きさは、最大で15cm程度、どれも角が丸くなっています(円礫〜亜円礫)。礫の種類は、チャートが多く、結晶片岩や砂岩などがこれに続きます。結晶片岩の礫は平たい形をしているので、露頭の表面からぴゅっと飛び出しています。
礫の周りの基質は、褐色の砂岩です。固結度が弱く、ハンマーの先で引っかくとボロボロと崩れます。このような地層に波が打ち寄せると、地層がどんどん崩れて、その中から礫が洗い出されます。
この地層は、大阪層群五色浜累層(新第三紀鮮新世〜第四紀更新世)にあたります。礫層を主体とすることから、主に河川や湖で堆積してできた地層と考えられます。
五色浜累層は、礫に結晶片岩が含まれていることが特徴です。この結晶片岩は、三波川変成岩のもので、中央構造線の南側に分布しています。この近くでは、沼島や四国の吉野川沿いにありますが、五色浜累層の堆積当時、この石はどこからどのように流されてきたのでしょうか?
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大阪層群五色浜累層の地層 |
礫岩層(写真右の一部を拡大) |
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いろいろな色のチャート |
チャート
表面がつるりと磨かれた丸い小石がチャートです。大変硬く、くぎでも傷がつきません。チャートだけでも、白・黒・赤・茶・灰色・緑といろいろな色があります。
多くのチャートには、白や黒の細い脈が複雑に入っています。水にぬれると、その縞模様が鮮やかに浮かび上がります。
白いチャートは、結晶片岩のひとつの石英片岩とよく似ていて、それと区別がつかないものもあります。
チャートは、深海の底に放散虫などのプランクトンの遺骸がゆっくりゆっくりと降り積もり、それが固まってできた岩石です。
いろいろな結晶片岩
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結晶片岩
結晶片岩は、高い圧力による変成作用を受けてできた岩石です。変成作用によって、岩石をつくる鉱物が一定の方向に並んでいるために、うすくはがれやすいという性質をもっています。これを片理といい、そのために海岸の小石も平たい形をしています。
結晶片岩にも、含まれている鉱物の違いやつくりの違いによって、いくつかの種類が見られます。
美しい紫紅色をしているのが、紅れん石片岩です。この色は、紅れん石というピンク色の鉱物が含まれているためです。片理がよく発達し、片理面には銀色に光る白雲母の細かくうすい結晶がぎっしりと並んで、きらきらと光っています。
緑色をしているのが、緑色片岩です。緑色をしているのは、緑泥石や緑れん石がふくまれているためです。
また、緑色片岩の中には、表面に白い粒の目立つものがあります。この白い粒は、変成作用でできた曹長石(斜長石の一種)の結晶で、このような岩石を、点紋緑色片岩といいます。
縞もようの目だつ黒い石が、泥質片岩です。真っ黒い石墨、きらきらと小さく光る白雲母、白い石英、黒く光る黒雲母などからできています。
縞もようは、石英が多く白っぽい層と、石英が少なく黒っぽい層が薄く交互に重なっているためです。
砂質片岩は、白・茶・オレンジなど、さまざまな色をしています。入っている鉱物の違いよってできた縞もようが見られます。石英がもっとも多く、白雲母、黒雲母などが含まれています。片理はよく発達していますが、ほとんど石英からだけできている石(石英片岩)にはあまり片理が見られません。
左上が石英閃緑岩、右下が花崗閃緑岩
それ以外は花崗岩
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深成岩類
灰色透明の石英、白い斜長石、ピンクのカリ長石、黒い黒雲母の粒からできているのが、花崗岩です。六甲山でよく見られるタイプです。
カリ長石をあまりふくまず、黒い鉱物として黒雲母以外に角閃石をふくんでいるのが花崗閃緑岩です。
また、黒雲母や角閃石が一定の方向に並んだ黒っぽい石英閃緑岩も見られました。
ほとんどが砂岩
右下の1つだけがシルト岩
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堆積岩類
小さな砂粒が集まって固まっているのが砂岩です。表面は波に洗われて丸くみがかれていますが、手で触ってみると少しざらざらした感じがします。なかには、葉理(縞模様)の見られるものもあります。
砂よりも、小さな粒が集まって固まったシルト岩もわずかに見られました。
溶結凝灰岩(左の3つ)
緑色岩(右上)、安山岩(右下)
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その他の岩石
白い長石や灰色で透明の石英の結晶が小石の表面に目立つのが流紋岩質の溶結凝灰岩です。これは、火砕流によってできた岩石です。
白い長石の斑晶の目立つ安山岩、玄武岩質の溶岩が海水と反応してできた緑色岩もわずかに見られました。
これらの小石に交じって、レンガや瓦(かわら)が壊れて丸い小石となったものも見られます。レンガは独特の赤褐色で、すぐに分かります。
瓦からできた小石には、小さな丸い穴がたくさん入っています。手のひらにのせて見ると、その軽さが分かります。
特産品の瓦の小石がかなり含まれているところも、淡路らしい感じがしました。
■ 場 所 ■ 洲本市五色町五色浜 25000図=「都志」
■ 交 通 ■ 淡路交通バス「五色浜」からすぐ
■探訪日時■ 2006年5月4日
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