フォンリットFonrit、奴隷の帝国
概観
パマールテラ南方大陸、中央北部に突き出している半島部がフォンリットと呼ばれている地域です。いくつもの都市国家が、専制的な支配者たちによって治められています。統一されているとは言いがたい状況ですが、二つの強い勢力が覇を競っています。
西方ウーマセラUmathela(訳注:第一期、第二期にオーランスを信仰する白人が多く移住している地域、緑エルフや茶エルフが支配している)につながる陸地をアーファジャーンAfadjannが支配しています。
本土からポイシダPoysida海峡を隔てた島カネム・ダーKanem Darにあるホンボリ・トンドHombori
Tondoを都にして治めており、その主君はジャーンJannという称号で知られています。ジャーンは代々、「首吊りの」ダーリスターDarleester
the Nooseという神性の大司祭で、その支配下にある者は反逆心をジャーンに対して抱くだけで首を絞められることになります。
今のジャーンであるアスタマンクスAstamanxはかつてカリーシュトゥと手を組んで先代のジャーンを倒した経歴を持っていますが、今では盟約を裏切り、カリーシュトゥとの関係は非常に悪化しています。
東の三つの大きな島嶼部と沿岸地域を黄金のカリーシュトゥKareeshtuが支配しています。神を僭称するヴァデルVadel人がオンラクス(フランチ)の英雄王、フーム・ジスの海軍に破られた後、その海軍力に取って代わる形で今ではフォンリットはおろか、南部のラスカルLaskalや北のクマンクKumanku諸島まで支配しています。
(ただしローラルLoral諸島の征服は無残に失敗しましたし、アーファジャーンに裏切られています。また後の英雄戦争に「狂戦士」ハレックが王国を建てるのはラスカルです。)
カリーシュトゥではツァニャーノTsanyano運動は下火で、伝統的なガラングリファ聖典Garangrypha
Canonの解釈が盛んです。(つまり奴隷の自由はほとんど認められていません。)
カリーシュトゥの首府と呼ばれる都市は二つあり、ひとつは本土のトンディージTondiji、ここでは拷問の神イーカズへの信仰が盛んです。もうひとつは島嶼部にあるディンダンコDindankoで、ここはグローランサ有数の海軍の根拠地で、旗艦には船首にヴァデル人の提督のミイラが飾られています。
現在のカリーシュトゥの君主はアルチドミデスArchidomidesという名ですが、その取り巻きの上位階層たちはトンドTondと呼ばれ、Peter
Metcalph氏は独特の魔術を操る結社のようなものと考えています。(彼らの崇める神性もしくは神聖な存在はテンタクルTentaculeと呼ばれる存在です。Peter
Metcalph氏はオンパラムを頂点にする魔術的、霊的なピラミッドをこう呼んでいると解釈しています。)
住民
ほとんどの人間は黒人と青(ヴェルダング)人の混血ですが、少数のウーマセラから来た白人や黄色人も小さなコミュニティを作っています。混血は珍しくありませんが、ヴェルダング人の特徴を多く備えていればいるほど、卑しい生まれだとみなされます。
伝説の島シノブトゥThinobutuから海を渡ってきた民はタラホルンTarahorn(フォンリット南東部)に独立したコミュニティを築いています。彼らも黒い肌を持っているようですが、完全に別系統のようです。(ポリネシア人のようなイメージ?)
宗教
(フォンリットのパンテオンの神の多くが、古い設定の(いわば神知者の統一神話観が優勢だった)神名録で混沌の神とみなされていたことは非常に興味に値すると思っています。イーカズIkadz、セセイネイSeseine、オンパロムOmpalamなど。http://www.glorantha.com/library/prosopaedia/)
オンパロムと奴隷制
オンパロムを主神(ほとんど唯一神に近い?)形で崇めるガランダイテスGarandites(「冷酷なる」ガランゴードスの僕たち)がフォンリットの上位階級を長いこと占めてきました。彼らの中の伝統主義者は自由が全くの邪悪な考えとみなしています。全ての人が何らかの奴隷であり、神々もオンパロムの奴隷なのです。
(奴隷といっても、優遇されていて主人にきわめて忠実な個人的奴隷と非人道的に扱われているヴェルダン人などとは全く社会的な扱いが違うのですが。)
最も卑しい奴隷は神を失っているヴェルダン人であり、彼らの多くは社会的な能力や、才能、気力を魔術的に全く持っていないので、彼らを虐待することは理にかなったことだと考えられているのです。(問題は、彼らに古の月の力を奮い起こすような存在が現れることです。後述のイラニアン・リーパーの項目を見て下さい。)
ツァニャーノTsanyano運動
ウーマセラに沈黙のカルト、コミュニケーションこそ悪であるとみなす預言者が現れたのは12世紀のことですが、その影響を受けてのことかもしれません。いくつかの運動(きわめて男性優位主義的なフォンリットでの)女性の反乱やカテーレKateleの復古主義者(ガランゴードス以前の時代を理想とする)の運動を経てツァニャーノ運動は続いています。
カラバーKalabarと炎の魔術師の伝説
帝国の時代、このフォンリット南部の都市に強力な魔道師(たち)の存在があったという説をPeter
Metcalph氏は唱えています。
その後、セセコSeseko、「炎の魔道師」によって邪悪な住民たちは滅ぼされましたが、Peter
Metcalph氏はその住民の魔術が現代のトンドたち、(カリーシュトゥの現在の支配階層)に伝わっている可能性があると考えています。
イラニアの跳び手たちYranian Reapers
14世紀の前期、赤の月(彼らは惑星イランと呼んでいましたが)を崇める奇妙な集団が現れ、ヴェルダング人に反抗の力を与え、都ファラージェFaladjeでフォンリットを支配しました。なぜかその後、忽然として彼らは姿を消しましたが、英雄戦争も近づき、彼らの帰還が囁かれており、現在の支配階層は怯えています。
エベシュ超越教会Ebbeshite Transcendental Church
アーファジャーンの一都市、エベシャルEbbeshalに本拠を置くマルキオン教の一派。(といっても北大陸やウーマセラのマルキオン教とは程遠い教義を持っています。)
その預言者、第二期末のエベシュは
「自らの欲望に従うことが信徒の務め」
という教えを生み出し、その信者たちは快楽主義者や虐殺、強姦、拷問その他ありとあらゆる極端な行動で悪名高い存在です。
神話と歴史
神代
魔道の民の話
「マルキオンの民の一部であったヴィーモルニViymorniの中に悪しきヴァデルVadelが生まれた。彼の民、ヴァデリはドワーフ、後に混沌と結び、全世界の征服を企て、あやうくその野望は成功しかけたが、ザブールの大魔術により滅ぼされ、世界は救われた。
彼らは南方にかつてオービルOabilという植民地を築いていたが、そこでは爬虫類の民、ペルマーPelmreを捕らえ、魔法の実験に使っていた。(彼らがラスカーダンLascerdan(第一期にエルフに滅ぼされた古の民)やスラージSlarge(第三期にタリエン(パマールテラ南西部)に繁栄しているトカゲ人の種族、人間には敵対的、魔道を用いる)に関連しているという説をPeter
Metcalph氏は立てています。)彼らが永遠に地獄にいるように祈ろう!」
南方のパマールトを崇める精霊の民の話
「北の民は常に狂っている、そこにはトリックスター、ボロンゴBolongoが作った悪しき山(スパイク)があった。後にそこは混沌を生み出し、自らつくり出した悪に
滅ぼされてしまった。
アートマルの民もいた。彼らは文明、建物やモノを人の心より崇めるようになり、堕落していった。混沌がやってくるとその神は殺され、神を奪われた青い肌の民は魂を失ってしまった。トリックスターを信ずるな!」
歴史
曙の時代、フォンリットには小暗黒時代の栄光の残照、ヴェルダング人のアートマルの帝国の残余が勢力を張っていました。その民の肌は青く、アートマルの母、失われた青の月の女神を崇めていました。
しかし、混沌に破られてその神は奪われ、過去の栄光にすがるだけの老人の国と化していました。
マーシノMarthino海にあった伝説の国、シノブトゥが沈んだのは神代ですが、その民は沿岸地域、キモスKimosやマスロ海のエラムルElamle、フランチFlanchに移住し、原住民やエルフたちと混じり合いました。フォンリットにも一部移住しました。
北方大陸で第二期の始まり、太陽暦500年、ジョラー北部のラスカルLaskalの地に侵略者が現れ、その圧力を逃れて「冷酷なる」ガランゴードスGarangordos
the Cruelと17人の使徒たちが青の月の帝国の遺跡の数多いフォンリットに移住しました。
ガランゴードスは先祖のパマールトの首飾りの儀式を改変し、圧制者オンパロムのカルトを創始しました。彼はそのすぐ後裏切り者によって殺されましたが、彼の17人の一族は生き残り、それぞれ都市を建設しました。
(しかし彼らのガランゴードスの言葉の解釈に違いがあったためにフォンリットの諸都市は常に争いを続け、まとまるのは強力な外敵に脅かされる時だけだった、というのは良くある話。)
帝国の時代、フォンリットは神知者と同盟し、その一部は邪悪なる「六脚帝国」として南方の民に知られていました。(馬を知らないジョラーの民には、騎兵は馬と一体に見えたのです。)彼らは神知者に協力して南方に攻め入り、東方に強大な勢力を築いていたイエローエルフのエリノール帝国と争いました。しかし第二期末の大災害と「大閉鎖」により、フォンリットは神知者の同盟者だったつけを大きく払うことになりました。多くの土地が海に呑まれたのです。
第三期初頭、ウーマセラのマルキオン・シダルフSedalpism派の中から沈黙のカルトが生まれ、
http://www3.plala.or.jp/altinae/short/sedalpi_j.htm
それに乗ずる形でフォンリットのウーマセラへの侵略が始まりました。その侵略の先頭にはエベシュ教徒がいました。これが「対沈黙戦争」です。
14世紀、謎の勢力、イラニアの跳び手たちがヴェルダング人を蜂起させて勢力を握ることに成功しました。
彼らもウーマセラへの侵略を望み、エルフ族との戦争は「季節戦争」と呼ばれています。結局、ウーマセラの人間がエルフに加担したことにより、最終的にアーファジャーンは追い払われてしまいました。
16世紀末、海の大解放がもたらされましたが、パマールテラには悪しきヴァデリ人の手でもたらされました。彼らは自らを神と称し、ウーマセラとフォンリットの大部分を征服しました。
彼らはこの征服を神々の戦争時代の植民地にちなんで新オービルと呼びました。しかしその征服は長くは続かず、オンラクス(マスロ海東岸半島、古名フランチ)の英雄王、フーム・ジスによってオエンリコ岩礁Oenriko
Rockに破れ、ヴァデリ人の南への航路を支配していたオレンジ・ギルドはジルステラに追い払われ、その制海権はカリーシュトゥに奪われました。
(魚人たち、テルティヌスやルードックの抵抗についてはまた後ほど)
フォンリットの背景世界について、発展に関する文献については以下のページを参照してください。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~BLUEMAGI/Fonrit-e.htm