連載ビアディー小説
第二弾
←内藤ドーター著
しょの1
「ダンちゃん、ドーターちゃん、お祖母ちゃんはお星様になってしまったのよ。」
お葬式の次の日、『ボーハテー』で、綺麗なお月様と、
いっぱいのお星様のお空を見上げながら、お母しゃまが言いました。
「かーちゃん、ばーちゃんはどの星になったの?」
ダンお兄しゃまが聞くとお母しゃまは、困った顔をして
「このお空いっぱいのお星様の、どの星なのかはお母さんも知らないの。
でも昔お祖母ちゃんが言ってたわ、人は死ぬと、みんな『てあ』という名前になって、
思ってくれている人の一番近くのお星様になるんだって。」
「ふぅ〜ん」ダンお兄しゃまが言いました。
ドタちゃんも『ふぅ〜ん』でしゅた。
その夜です。
ドタちゃんは、お父しゃまのお布団の真ん中でヘソ天、右側はダンお兄しゃま、
お父しゃまは、今にもお布団から落ちそうになりながら、左側で『グガー・グガァ〜』
と大イビキでおネンネしていました。
『ス〜〜』
「お部屋の戸が開きましゅたよ。
あれっ!右側でおネンネしていたはじゅの、ダンお兄しゃまが居ましぇんねぇ。」
『バタンッ!』 『ガタ・ガタ・バッシーン』 『カリ・カリ・カリ・・・・・・』
「玄関でしゅ。」
急いで玄関に降りて行くと、ダンお兄しゃまが玄関のサークルを倒し、バリケード
代わりのラティスを倒し『カギ』を開けています。
「ダンお兄しゃま、何をしてるんでしゅか?」
「ドーター、兄ちゃんは今から『ばーちゃんの星』を探しに行ってくる。
思ってくれている人の一番近くのお星様なら、前の山に登れば、ばーちゃんに会える
だろうから。
それじゃぁな!」
ダンお兄しゃまは、玄関から真っ直ぐに前の山に向かって、走り出して行きました。
「いけましぇん! いけましぇん! お父しゃま、お母しゃまが心配しましゅ!」
「ダンお兄しゃまは、強そうな名前で威勢がいいけど、まったくの弱虫しゃんでしゅ。
ドタちゃんが守ってあげなければ・・・・・・・・
ダンお兄しゃま〜〜っ、ドタちゃんも行きましゅうぅ〜〜」
I'll save you !
ドタちゃんも後を追いかけて、お家をとびだしました。
幼稚園を越して、小学校の裏山に掛け登り、暗い道をしばらく走りました。
ふと、
ドタちゃんは、ダンお兄しゃまの臭いが分からなくなっている、自分に気が付きまし
た。
だって、ダンお兄しゃまとドタちゃんは毎日同じゴハンを食べて、お母しゃまと遊ん
で、お父しゃまとネンネしています。
2匹とも、お母しゃま、お父しゃまの臭いが同じように付いているワンなので
ダンお兄しゃまの臭いを探してもドタちゃんの臭いと同じなので探せないのです。
ここは山の中、夜中で真っ暗闇です。
ドタちゃんは「お父しゃま〜 恐いでしゅぅ〜」とつぶやきました。
しょの2
ここは山の中、夜中で真っ暗闇です。
恐いのをジッと我慢して、ドタちゃんは考えました。
【ドーター、兄ちゃんは今から『ばーちゃんの星』を探しに行ってくる。
思ってくれている人の一番近くのお星様なら、前の山に登れば、ばーちゃんに会え
るだろうから。】
こんな事を言ってましゅた。
「そうでしゅ!」
「頂上に行けばダンお兄しゃまが居ましゅ。
一番高い処を探せばいいんでしゅ。」
でも、 ここは山の中、夜中で真っ暗闇です。
「何でも良いでしゅ、この道をズーと行けば頂上に行けましゅ。」
ドタちゃんは、真っ暗な道を走り出しました。
どの位の時間、走ったのでしょうか、お空がだんだん白くなってきました。
「明るくなってきましゅた。
この辺で一番高いお山は何処でしゅかねぇ?」
もうドタちゃんは高いお山に登れば、其処には必ずダンお兄しゃまが居るものだと
決めてしまって、一番高いお山の頂上を見つけることに必死でした。
「あのお山が一番高そうでしゅ、あそこへ行ってみましゅ。」
ドタちゃんは、ノドの渇きも、アンヨの痛いのも忘れて走り出しました。
だんだん、お空が明るくなってきました。
お日様が、『オッハァ〜』と海の上で微笑んでいます。
ドタちゃんは、やっと頂上に着きました。
でも、どんなに回りを見回してもダンお兄しゃまの姿は見えません。
「ダンお兄しゃまの替わりにドタちゃんが『お祖母しゃまのお星様』と会いましゅ。」
と言って、お空を見上げると
真っ青な空に、綿の花のような真っ白い雲がプカリ・プカリと浮いていました。
そうです、もう朝なんです。
お星様は夜にならないと見えません。
「どうしゅましょう? 困りましゅた。」
ダンお兄しゃまは見つからないし、『お祖母しゃまのお星様』も見えないし、
ドタちゃんも迷子になったようです。
「ああぁ!ドタちゃん、お空が飛べたらなぁでしゅぅ!
『お祖母しゃまのお星様』だって、ダンお兄しゃまだって簡単に探しぇるし
お家にだって、直ゅぐに帰れるのにぃ。」
「お空を飛ぶ!!!」
「しょうでしゅ、ウェンディしゃんが居ましゅ。
“ウェンディ”というお名前でしゅから、ドタちゃんもピーターパンがお空を飛べる
ようにしてくれる、かもしれましぇん。
ムフ・ムフでしゅ。
でも、ウェンディしゃんは何処に居るんでしゅかねぇ、この間遊びに来てくれた時
お父しゃまが『ずぅーと上の方』って言ってましゅた。
『下の方』って海でしゅから、山の方って事でしゅね。
このまま行けば、なんとかなりましゅかねぇ。」
お山を、いくつも越えて走りました。
ドタちゃんは「お母しゃま〜、白いおみじゅが飲みたいでしゅ。」とつぶやきました。
しょの3
お山を、いくつも越えて行きました。
ドタちゃんは、夜になっても『お祖母しゃまのお星様』を探す事を忘れて、
走りました。
次の日の朝です。
お山が無くなりました。
平らな土地にお家がいっぱい、車がいっぱいです。
「これは、困りましゅたねぇ、ドタちゃんお山を目印に来たのに、
お山が無いでしゅ。
どっちへ行けば良いんでしゅかねぇ?」
道の上に『16』と書いてあります。
「ドタちゃん『16』って読めましぇんけど、なんか気に入りましゅたから、
この道を行きましゅ。」
上り坂を行き、下り坂を行き、どのくらい走ったのでしょうか。
大きな交差点に来ました。
「なんか、コッチに行ってみましゅ。」
トコトコ、トコトコと走るでもなく、歩くでもなく一時間ほど進むと
線路沿いの住宅街に来ました。
「コーブのないラクダ、コーブのないラクダ、ハァ〜 ・・・・・」
「ナンカ、聞いたことの有る、お歌が聞こえてきましゅたよ。
そうでしゅ!!
お父しゃまの替え歌『体の大きなシーズー』の元歌『コブのないラクダ』でしゅ。
こんな、マイナーで旧いお歌を歌うのは、
お父しゃまか、ウェンディママしゃまくらいのものでしゅ。」
ドタちゃんは歌声の主を探しました。
道の奥へ、右へ、左へ、だんだん声がハッキリしてきました。
「お姉ちゃん!ドーターお姉ちゃん!!」
「あーっ、ウェンディしゃん!」
たしかにウェンディちゃんのお顔を見たような気がしました
が、ドタちゃんはお目目の前が真っ暗になり、頭の中は真っ白になって、
ただ立っているだけでした。
「ママァー、ドーターお姉ちゃんが来たよ。
ママァー」
あんまり、ウェンディちゃんがうるさいので、ウェンディママがお家の中から出てき
ました。
チョンチョリンがとれて、お口の周りはヨダレでガヒガヒ、
コートは山の草と埃でボロボロのドタちゃんを見てウェンディママは、
「ひどく汚れてるけど、ドーターちゃん?」と聞きました。
ドタちゃんはその声を聞いた途端、ホッとして気を失ってしまいました。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん、・・・・」
ドタちゃんのお家とは比べものにならない綺麗なお部屋、綺麗なウェンディちゃんに
ボロボロのドタちゃんは飛び起きました。
「大丈夫よ、ドーターちゃん。
どうしたの?」
あれ!! ウェンディママしゃまの言葉が解りましゅ。
今までは、お父しゃまとお母しゃまの言葉しゅか、解らなかったのに、
どうしゅたんでしょうか?
「実は、『お祖母しゃまのお星様』を探しゅて、ダンお兄しゃまが・・・・・・」
一昨日の夜からの事をウェンディママにお話ししました。
えっ! ドタちゃん人間の言葉がしゃべれましゅ。
ヤッパリ ドタちゃんはおつむの良い子だったんでしゅねぇ。
I can speak human language !
「お父さんとお母さんには電話をしてあげますから、今夜は家でゆっくりネンネしな
さい。」
ここで帰ったら、ダンお兄しゃまを探せません。
「ウェンディしゃん、ドタちゃんお空を飛びたいの、ピーターパンしゃんに頼んで飛
べるようにしてくだしゃい。」
「お姉ちゃん、私は名前はウェンディだけど、ピーターパンとお友達じゃあないわ。
お姉ちゃんの妹だもん、そんなおつきあいは無いのよ、ゴメンね。
でも、東京には『東京タワー』と言って、高い高い塔が在るってパパが言ってたわ。
そこなら、『お祖母しゃまのお星様』と会えるんじゃあないかしら?
ヒョッとしたら、ダンお兄ちゃんも行ってるかもしれなくてヨ。」
良い事を聞きましゅた。
『東京タワー』でしゅね!
ウェンディママが、お母しゃまとお電話でお話しをしています。
ウェンディちゃんに、窓を開けて貰ってドタちゃんは、コッソリと『サヨナラ』を
しました。
二時間ほど走り、小さな公園の片隅でネンネをしました。
ドタちゃんは、「お祖母しゃま〜、どのお星様でしゅかぁ〜」とつぶやきました。
ウェンディ 千葉 黒坂Wendy
しょの4
二時間ほど走り、小さな公園の片隅でネンネをしました。
「ネェー、お母さんこの子だあれ!」
「あ〜ら、パパのパソコンで見たこと有るわョ。
誰だったかな〜。」
うるしゃいでしゅねぇ〜。
お目目が覚めてしまいましゅた。
あれ!! シュゴイ美人のビアディでしゅぅ。
此処は何処でしゅか?
「デジ〜ィ、アリ〜ィ」遠くで女の人の声がします。
「デイジィーお姉しゃまと、アリエルお姉しゃまでしゅか?」
「ええ、あなたはどなた?」
「内藤ドーターでしゅ。」
「ドーターしゃん?
何で此処にいるの?」
「東京タワーに・・・・・・」昨日、ウインディしゃんに教えて貰った
『東京タワー』の事を聞きました。
「私、車から見たことは有るわ、西にズーっと行くのよ。
でもドーターしゃん、お父さんや、お母さんに心配を掛けちゃあダメよ!
早くお家にお帰りなさい。」
「デジ〜ッ・アリ〜ッ」デジママの声が近づいてきました。
「ありがとうごじゃいましゅ。ドタちゃんは行きましゅ。」
公園を飛び出しました。
西でしゅね! 西! 西!
ドタちゃんは考えました。
西って何でしゅか?
わかりましぇん!
でも、デイジーお姉しゃまは、右手を上げてお日様の反対側を指していましゅたから、
そっちに行ってみましゅ。
2時間走りました。
車がイッパイ、ビルがイッパイ、人がイッパイです。
道行く人は、みんな汚いドタちゃんを見ています。
ビルとビルの間に、赤と白の高い塔が見えてきました。
「きと、あれが『東京タワー』でしゅ。」
上を見ながら1時間、『東京タワー』の下に着きました。
「まだ、お昼でしゅ。
『お祖母しゃまのお星様』には、夜にならないと会えましぇん。
夜まで、ひと休みでしゅ。」
暗くなって『東京タワー』が白く浮き上がってきました。
お月様だけが、ボォーと見えているお空です。
「お星様なんて・・・なんにも見えましぇん。
本当に、上に昇ると『お祖母しゃまのお星様』に会えるんでしゅかねぇ〜。」
人間のお兄しゃん、お姉しゃん達がビルに入っていきます。
「ドタちゃんも行ってみましゅ。」
「シッ、シッ、あっちへ行け、このノラ犬め!!」
あれぇ! ドタちゃんはノラ犬しゃんじゃあないでしゅよ。
『お祖母しゃまのお星様』を探しに来ただけでしゅよぉ。
『東京タワー』に昇らしぇて下しゃい!
「あっちに行け、ノラ犬!」
いけましぇん、小父しゃんに蹴飛ばされそうになりましゅた。
もっと、お星様の見える処へ行きましゅ。
「12」と書いて有るビルの裏でネンネをしました。
ドタちゃんは「ドタちゃんは、ノラ犬しゃんじゃあありましぇん。」とつぶやきまし
た。
しょの5
「12」と書いて有るビルの裏でネンネをしました。
「ドーターちゃん、ドーターちゃん、こんな処で寝て居ちゃあ駄目だヨ!」
ドタちゃんは、背中を揺すられて起こされました。
「あれ!小父しゃまはどなたでしゅか?」
「飯塚リン小父さんだよ。
たまに、レインボー・ブリッヂからBDNにメールを出してるだろう。
知らないかい?」
「リン小父しゃまでしゅか、お父しゃまに読んで貰っていましゅ。
何のご用でしゅか?」
「若い娘が、こんな東京でフラフラしていちゃあいけないよ。
父さん、母さんが心配するから、お家にお帰り!」
「リン小父しゃま、『お祖母しゃまのお星様』を探して家出をしゅた、ダンお兄しゃ
まを探しゅているんでしゅ。
お星様のよく見える、一番高い処を教えてくだしゃいましぇ。」
先日からの事をリン小父さんにお話しました。
「そうか、そういう事だったのか。
それなら富士山だよ、『霊峰』と言うくらいだから『お祖母しゃまのお星様』を探し
にダンお兄ちゃんが行っているかもしれないな。
じゃあ、このまま西へ行きなさい。
車に気を付けて行くんだよ。
横浜という処に着いたら美緒ママを訪ねなさい。
力になってくれるからね。
それじゃあ、小父さんはレインボー・ブリッヂに帰るよ。」
「リン小父しゃまぁ〜、またネェ〜さよならでしゅぅ〜。」
ドタちゃんは、お尻尾をパタパタして、何時までもお空を見上げていました。
「西でしゅか、横浜の美緒ママしゃまでしゅね。」
元気はいっぱいです。
でも、お腹はペコペコです。
ドタちゃんは、西に向かって走り出しました。
何時間、走ったのでしょうか。
お空が白くなってきました。
海の見える道をキョロ・キョロしながら歩いてますと、先の方に2匹のワンを連れて
散歩をしている人影が見えました。
白と黒っぽい2匹です。
ドタちゃんは、「お友達でしゅかねぇ〜」と独り言を言いながら目を凝らして見てい
ると、白い犬がリードを振り切って、此方へ飛んできます。
「茶緒!ストップッ!!」人影が大きな声で呼んでいます。
「茶緒?じゃあ黒いのは美緒お姉しゃま?そうしゅるとあれは美緒ママしゃま?」
茶緒と呼ばれた白い犬がドタちゃんの前に来ました。
「私は小林チャボと言います。貴女はドーターちゃんですか?」
「茶緒お姉しゃまでしゅか?はじゅめましゅて、私は内藤ドーターでしゅ。」
「チャボスケ!なんでリードを振り切っていくの、この突貫娘!
あら!あなたが、ドーターちゃん?」
「はい、はじゅめましゅて美緒ママしゃま、内藤ドーターでしゅ。」
「ドーターちゃん、飯塚リンちゃんがマクラ元に立って全部お話ししてくれてよ!
ママにお話をして、お迎えに来ましたのよ。
さぁ、我が家にいらしゃいませ。」
美緒お姉ちゃんが、美緒ママの脇から顔を出して言いました。
「ドーターちゃんお腹が空いたでしょう?バッチクなちゃって『おぶー』にも入りま
しょうね。」
「美緒ママしゃま、『おぶー』はまた汚れましゅから、結構でしゅ。
何か食べさせてくだしゃいましぇ。」
「あら、あら、そうね。美緒・茶緒お家に帰りましょう。」
Yum Yum!
ドタちゃんは、沢山のお肉、沢山のミルクをいただきました。
「ごちそうさまでしゅた。
おいしいご飯を沢山いただき、ありがとうごじゃいましゅた。
ドタちゃんは、これから西にいきましゅ。」
「大変ね、気を付けていくのよ!」
美緒ママの目で涙がお星様のようにキラリと光りました。
「ドーターちゃん、よろしいこと、少し西に行くと『江ノ島』と言う処があってよ、
其処に、ジェームズ君が居るから、細かい事をお聞きなさい。」
「食べて直ぐだから、あんまり速く走っちゃぁ、だめヨ!」
美緒お姉ちゃんと茶緒ちゃんの優しい言葉と、美緒ママのお母しゃまの様な目に送ら
れて、ドタちゃんはまた西へとゆっくり歩いていきました。
海の側の道は千葉のようです。
ドタちゃんは「リン小父しゃま、ありがとうごじゃいます。」と、つぶやきました。
飯塚リン 千葉 2000/ 7/17 逝去
小林美緒 神奈川 ゴージャス・デンジャラス姉妹の姉
小林茶緒 神奈川 ゴージャス・デンジャラス姉妹の妹
しょの6
海の側の道は千葉のようです。
2時間位歩いたのでしょうか。
海岸から海に向かう道があって、その道の先に島のある処に来ました。
「これが『江ノ島』でしゅか?
近くに、ジェームズお兄しゃまが居るんでしゅねぇー。」
キョロ・キョロしながら歩いていたら、洗いたてのサラサラ・フワフワの
コートに、黄色のバンダナを首に巻いた、黒ビアが居ました。
ドタちゃんは、恐る恐る近づいて
「ジェームズお兄しゃまでしゅか?」と聞くと
「うん!そうだよ、ドーターちゃんかい?」と言われました。
「はい、そうでしゅ。」
「待っていたよ、体は大丈夫かい?我家でゆっくりしていったら?」
「美緒・茶緒お姉しゃまのお家で、ゆっくりさしぇていただきましゅた。
ダンお兄しゃまが心配でしゅから、『富士山』って教えてくだしゃいましぇ。」
ジェームズ君は後ろを振り向いて、遠くに一際高く霞んで立っている山を指して、
「あれが『富士山』だよ。
お星様に一番近い、高い山だよ。」と言いました。
「まだまだ遠いから、気を付けて行くんだよドーターちゃん。」
ドタちゃんは、ジェームズ君と別れてトコトコと歩き出しました。
道は車がいっぱい走っています。
と、白い車が急に止まり、バックして戻ってきます。
ドタちゃんは、いつでも走り出せる様に身構えて、車を睨みました。
「お前、ドーターか?」
車から降りてきたお兄さんが言いました。
「あ・あ・あっ!!
明くんお兄しゃんでしゅぅ〜。」
ドタちゃんはお尻プルプル・おしっぽパタパタになりました。
「なんで、こんな処をお前が歩いているんだ?
汚ったねーな!
まっ良いかっ、車に乗れ。」
明くんお兄ちゃんの白いS−MXの助手席に乗せて貰ったドタち?んは
ホッとして、そのまま眠ってしまいました。
何時間たったのでしょうか。
目が覚めるとドタちゃんの首に、
首輪とリードが付いていて、リードの端はハンドルに縛り付けてありました。
「あれ!
あれ!
明くんお兄しゃ〜ん!
これは何でしゅか?」
ドタちゃんの声が聞こえたのか明くんお兄ちゃんがドアを開けて、
「おっ、ドーター起きたか?
可哀想だけど、母ちゃんが『首に綱を付けてでも、連れ帰って来て!』
って言ってるからこのままで我慢しな!
今から、静岡のバス釣り友達の処へ行ってから、千葉へ帰るからな。」
車は走り出し、暗くなってから止まりました。
「大人しくしてろよ。」
と言って、明くんお兄しゃんは車から出ていきました。
リードは、直ぐに食いちぎれました。
でも、ドアが開きません。
右も左もだめです、後ろのドアも開きません。
ガッカリしていたら、明くんお兄ちゃんが帰って来ました。
運転席のドアを明くんお兄ちゃんが開けた時、ドタちゃんは思いっきり突進しました。
成功です。
車の外に出られました。
「ドーター! ドータッ! オ〜〜イ!」
後ろで、明くんお兄ちゃんが呼んでいます。
暗い道を、一目散に走りました。
もう、明くんお兄ちゃんの声は聞こえません。
ホッとしたら、急に寂しくなってきました。
ドタちゃんは「ダンお兄しゃま〜」とつぶやきました。
ジェームズ 神奈川 植松ジェームズ
明くん 内藤(ダン・ドーター)の長兄(頭が犬並?) 道楽息子
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ホッとしたら、急に寂しくなってきました。
今夜は小さな橋の下でおネンネです。
ウエンディちゃん、リン小父さん、美緒お姉ちゃん、茶緒ちゃん、
美緒ママ、ジェームズ君、明くんお兄ちゃん、
みんなが、夢の中に出てきました。
朝になって、周りがうるさくなってきました。
橋のたもとに小さな公園がありました。
その公園の中から人間と、ワンの声が聞こえてきます。
ドタちゃんの『野次馬根性』がムクムクと大きくなってきました。
「何でしゅかねぇ?、
何かあったんでしゅかぁ〜?」
公園の大きな木の下に、人間が4・5人、ワンが6頭います。
ワンはどうも、みんなビアディーの様です。
ドタちゃんと同じで、お口の周りが茶色になっている白黒のビア、
ものすご〜くカッコイイ茶ビア、
綺麗に手入れをされた白黒と、茶色のビアが4頭です。
ドタちゃんは、フッと思い出しました。
たしか、ケンお兄しゃまはこの静岡に居るはずでしゅ。
ケンお兄しゃまの本当のお名前は『◯◯◯◯ of ミナミフジ』だったはずでしゅ。
ケンお兄しゃまに聞けば『富士山』の色々な事が解るかもしれましぇん。
ヒョッとしゅたらダンお兄しゃまのことも聞けるかも・・・・
ムフ・ムフ・ムフでしゅぅ。
知らず知らずにニコニコしているドタちゃんでした。
「皆しゃん、こんにちわでしゅ、わたしは内藤ドーターと言いましゅ。
静岡に住むビアディーのケンお兄しゃまをご存じありましぇんか?」
「静岡のビアで、ケンと言ったら俺のことズラァ。」白黒のビアが言いました。
「ドーターちゃんって、千葉のドーターちゃんかい?」ものすごくカッコイイ茶ビア
のお兄さんが、ドタちゃんに聞きました。
「ドーターちゃん!どうしたの?何で静岡に居るの?わたしは坪井モモよ。」
「わたしは神谷ティナ。」
「わたしは望月ブレンダ。」
「わたしは望月デニース、よろしくね!」
「僕は神野コソフ。」
あぁ、このカッコイイ茶ビアのお兄しゃまがコソフお兄しゃまなんだ・・・・
ドタちゃんは、ポーとしてお返事ができませんでした。
「ドーターちゃん!どうしたズラァ?」
「実は、・・・・・・」ドタちゃんは、すべてをケン君にお話ししました。
そして、「お兄しゃまのお名前に『ミナミフジ』って有るから『富士山』の事を色々
知っているかと思って探していましゅた。」と言いました。
そうしたら
「バカじゃないのか、ドーターちゃん!
女のドターちゃんがダン兄さんを守れるハズがないだろう、ダン兄さんは男だヨ!
自分の身は自分で守れる。
君が居たら足手まといになって、自分自身の身も守れなくなる。
ダン兄さんを気遣うのなら、とっとと千葉の田舎に帰っておとなしく兄さんの帰りを
待っていなさい。」
白いお顔を真っ赤にして、ケン君は喋ります。
「あっちの方向に向かって帰れ!
途中の富士市あたりで、左に曲がって『富士山』へなんか行くんじゃあ無いゾ。
『富士山』を通り越して、真っ直ぐ千葉の田舎に帰れ!」
と、公園の反対側の出入り口を指差して言いました。
「ケン君、言い過ぎだよ。可愛い女の子に対して可哀想だよ。」
「ケンちゃんって横暴ネ!」
「ケン兄ちゃんキライ!」
「ケンチャン、見損なったわ!」
「ウンモ〜ッ!」
コソフ君・お姉さんビア達が、ケン君の言い方に怒っています。
「判りましゅた、アッチでしゅか。ありがとうごじゃいましゅた。」
ドタちゃんはケン君にペコッと頭を下げてケン君が指差した方の出入口に向かいまし
た。
「ケンお兄しゃま、ドタちゃんの事を心配して、あんな風に言ってくれてありがとう
でしゅ。
ドタちゃんは、人間とお話ができゆようになった時から、その人が心の中で考えてる
事も解るようになったんでしゅ。
ダンお兄しゃまに会えても、お兄しゃまの足手まといに成らないように、
そして『富士山』に登るために、あんな言い方で発憤させてくれたこと。
そのために、お友達のコソフお兄しゃまや、素敵なお姉しゃまビア達に
誤解される様な言い方を、わざとしゅてくれたケンお兄しゃまの優しさを、
ドタちゃんはじぇったい忘しゅれましぇん。」
ドタちゃんは、風をきって走りました。
『富士山』が近づいてきました、この町で曲がります。
ドタちゃんは、「ケンお兄しゃま、優しい気持ちをありがとうでしゅ。」とつぶやき
ました。
賀川ケン 静岡
神野コソフ
静岡
坪井モモ 静岡
神谷ティナ 静岡
望月ブレンダ
静岡
望月デニース 静岡
しょの8
『富士山』が近づいてきました、この町で曲がります。
どのくらい走ったのでしょう。
もう、『富士山』は見えません。
岩と土とリュックを背負った人達だけです。
みんな、ドタちゃんが追い越して行くと「オッ」「オォ〜」「アラ〜ッ」と言います。
先ほどから、白い霧に周りを包まれて、息が苦しくなってきています。
頂上に着きました。
人間だらけで犬はいません。
夜にならないと、お星様は出ないし、ダンお兄しゃまも来ないでしょう。
しかたが無いので、おすわりをしていると知らない小父さん、小母さんがドタちゃん
の頭をナデナデして「何処から来たの?」と話し掛けていきます。
でも此処で、誰かにダンお兄しゃまの事を聞いたら「犬が喋った!」と大騒ぎになる
でしょう。
しばらくすると、お空が赤くなり、そして青くなって、暗くなりました。
お空にはお星様がいっぱいです。
でもお星様はみんな遠くで、小さく光っています。
大きいのは、お月様だけです。
ドタちゃんは、キョロキョロとダンお兄しゃまを探しました。
でも、ワンの影はおろか、人間の影もありません。
「ドーターちゃん」
ドタちゃんの後ろから、優しい女の人の声がしました。
「はい。」
ドタちゃんが振り向くと、綺麗な布を身に着けた、髪が長く、色の白い女の人が立っ
ています。
「お姉しゃまは、どなたでしゅか?」
優しい微笑みを浮かべながら、その女の人は答えました。
「私は、月の女神です。
むかし、『テラ(地球)』のこの国に来た時は、『かぐや姫』と呼ばれていました。
千葉の浜辺のお散歩から、ずっとドーターちゃんを見ていたのです。
ダンお兄ちゃんはお家にいますよ。
お父さんも,お母さんも,ダンお兄ちゃんも心配していますよ。
千葉のお家にお帰りなさい。」
「じゃあ、ダンお兄しゃまは『お祖母しゃまのお星様』を見つけられたんでしゅねぇ、
よかったでしゅう〜」
「いいえ、ダンお兄ちゃんは『てあ』を見つけることはできませんでした。
『てあ』は、残されて、想い続けてる人が、いつか見つけることのできるものです。
ドーターちゃんもいつか見つけられますよ。」
「わかりましゅた。
ドタちゃんは千葉に帰りましゅ。
いちゅか、『お祖母しゃまのお星様』を、お父しゃま、お母しゃま、ダンお兄しゃま
と見ちゅけましゅ。
ありがとうごじゃいましゅ、さようなやでしゅ。」
「気を付けて帰るんですよ。」
月の女神様は月に向かってスーっと消えて行きました。
「千葉はドッチでしゅかねぇ。
目印がなんにも無いんで解りましぇん。
登ってきた反対側に行けば帰れるでしょう!行ってみましゅ。」
ドタちゃんは、ケン君に【途中で左に曲がって『富士山』へなんか行くんじゃあ無い
ゾ。『富士山』を通り越して、真っ直ぐ田舎に帰れ!」】
と道を教わった事をもう忘れていました。
『富士山』の頂上から、裏側へ飛ぶようにして降りていきました。
お空は、黒い雲でいっぱいになってきています。
随分、下まで降りてきました。
後ろは、今まで降りてきた土と石、前も、右も、左も、森です。
「困りましゅた、どちらへ行けば良いんでしゅかぁ?」
とうとう、黒い雲からザァーっと雨が降り出してきました。
お星様や、お月様の光が無くなった暗い中で雨のしぶきだけが白く見えます。
「いやでしゅねぇ、雨の当たらない処へ行きましょう。」
さっきまで一番黒々としていた、左側の森の中へドタちゃんは駆け込みました。
「ここはあんまり雨が当たりましぇん、このまま行けばどこかで道に出るでしょう。」
でも、何処まで行っても森は続きます。
雨に濡れた土が、ドロドロしています。
I got wet.......
ドタちゃんは「お母しゃま、直ゅぐ帰りましゅ。」とつぶやきました。
しょの9
雨に濡れた土が、ドロドロしています。
いつのまにか、雨が止んでいました。
森の中に一本の道が通っています。
「この道を右でしゅかねぇ、しょれとも左でしゅかねぇ。
困りましゅたねぇ!
しょうでしゅ!
さっきは左に曲がりましゅたから、今度は右にしましょう。」
ドタちゃんは、道に出て右の方向に走り出しました。
もう、お空が白く、明るくなって来ています。
暫く走ると、道に大きなトラックが停まっていました。
千葉のお家の前を走っているトラックは、ものすごい大きな音を出していますが
このトラックは静かです。
「このトラックなら恐くないでしゅ。脇を通っても安心でしゅ。」
トラックの脇をトコトコと歩いていますと、
「おい、ノラ犬!」と車の中から声がしました。
「ドタちゃんは、ノラ犬しゃんじゃあありましぇん!」
キッと振り返って上を睨み付けると、
運転席からまん丸い顔をした小父さんがオイデ・オイデをしています。
「何でしゅか?」
ドタちゃんが寄っていくと小父さんは、トラックのドアを開けて降りてきました。
右の手に、小父さんが今まで食べていたメロンパンを持っています。
「そういえば、美緒ママしゃまにご飯をいただいてから、
2日間ご飯らしいものを食べていましぇん。
お腹が空きましゅた。」
小父さんは、右手に持っているパンを半分ちぎって、ドタちゃんの目の前に出して
「お座り!」
ドタちゃんは、その言葉で座りました。
「お手!」
小父さんの大きな手に、ドタちゃんの小さな、きちゃない手が載りました。
「おまえ、ノラ犬じゃあないな。
ほら、食べろ。」
半分にちぎったパンをドタちゃんのお口の側に持ってきました。
お腹が空いていて嬉しかったので、ドタちゃんはパンを取ろうと大きな口を開けて
顔を前に出しました。
急いで取ろうとしたので、下の牙が小父さんの指に当たりました。
「いてっ!」
小父さんはビックリしてパンを落としました。
「ゴメンなしゃい、小父しゃんの手を咬むつもりは無かったんでしゅぅ。
急いだんで、牙が当たってしまったんでしゅぅ。」
そう心の中で謝りました。
パンは下に落ちたままです。
小父さんは残りの半分のパンを差し出しました。
「急がなくたって挙げるから、ゆっくり食べな。」
小父さんの指から、血がユックリと流れています。
ドタちゃんはビックリしました。
「ゴメンなしい、ゴメンなしゃい、本当にゴメンなしゃいでしゅ。」
小父さんの指をペロペロと舐めました。
「大丈夫だよ、パンを食べな。」
ドタちゃんにパンを渡してハンカチで指を押さえました。
貰ったパンを食べてしまったドタちゃんが、
落ちている半分のパンを食べようとすると
「ノラ犬じゃあないんだろ。
落っこちた物を食べるんじゃあない、買ってあげるから車に乗れ。」
と、トラックのドアを開けてくれました。
でも、トラックは高くて、ドタちゃんには乗り込めません。
「しょうがないなぁ。」
小父さんは、ドタちゃんを抱いて車に乗せてくれました。
「お前は何処から来たんだ?
何処へ行くんだ?
小父さんはこれから茅野と言う所にお仕事で行くんだ。
そこまで、乗せていったあげるから、後はまた、自分で道を探せ・・・・・・。」
小父さんが何か言っていますが、ドタちゃんはもう寝てしまいました。
「おい犬、ゴハンをかってきたゾ。
牛乳もあるゾ。」
何時のまにかお昼になっていました。
大きな駐車場です、トラックが一杯停まっています。
「小父さんはここでお仕事をするから、こっから先はまた1人で行くんだぞ。
長野はアッチ! 佐久はアッチ! 甲府はアッチ! 伊那はコッチ!
車が多くて危ないから、山を通って行った方がいいぞ。
ゴハンを食べたら、気を付けて行けヨ! 小父さんは仕事に行って来る。」
ドタちゃんは、「ありがとうごじゃいましゅ。」と心の中でお礼を言いながら
ゴハンを食べました。
ゴハンを食べ終わって、ドタちゃんは考えました。
「長野? 佐久? 甲府? 伊那? どこの名前でしゅか?
アッチ?アッチ?アッチ?コッチ!
1つだけコッチでしゅ。コッチに行きましゅ。」
伊那の方向に向かいました。
小父さんが、甲府と言わずに東京と言っていれば、千葉の方向だと解ったのですが
ドタちゃんは全然違う方向に向かいました。
「【車が多くて危ないから、山を通って行った方がいいぞ。】と小父しゃんが言って
ましゅたね、コッチの方向の山に向かいましゅ。」
ドタちゃんは走りだしました。
ドタちゃんは「小父しゃん、ドタちゃんはノラ犬しゃんじゃあないでしゅから、
落っこちたゴハンは、もう食べましぇんヨ。」とつぶやきました
しょの10
ドタちゃんは走り出しました
小父さんと別れてから言いつけどうり、山に入り伊那の方向に走りました。
森を抜け、山を越え、朝まで駆けました。
森の中に小川が見えたとき、ドタちゃんのノドがゴックンと鳴りました。
そういえば、小父さんと別れてから、何時間もお水を飲んでいません。
「お水でしゅ!」
木の切り株をピョンと飛び越して、前足を付こうとしたら、地面が在りません。
切り株の先は低くなっていたんです。
「えっ!ええっ!」っと思ったときには、背中から地面に落ちていました。
「痛いでしゅうぅ〜、イタイでしゅヨォ〜、お母しゃま、いたいでしゅぅ〜」
この旅に出て、ドタちゃんは初めて泣きました。
いいえ、いいえ、痛くて泣いたんではありません。
誰も居ない森の中の寂しさに、とうとう我慢できなくなったんです。
「痛いでしゅョ〜、お父しゃまぁ〜、来て下しゃいましぇ〜。」
「礼文っ?・・・な訳ないよな!オイ犬、大丈夫か?」
小川の反対側の森の中から、人間の小父さんが出てきました。
細い竹の棒と篭を持っています。
優しそうな小父さんなので、ドタちゃんは、礼儀正しくご挨拶をしました。
「はじめましゅて、内藤ドーターといいましゅ。」
「ほぉ〜、ドーターちゃんって言うんだ、人間の言葉が喋れるんだねぇ。
それにしても、むかし小父さんの家にいた礼文という犬に、ドロンコでキチャナイ
ところが良く似ているねぇ。
ドーターちゃん、疲れているようだね、小父さんのお家においで!」
「ありがとうごじゃいましゅ。
でも、ドタちゃんは背中が痛くて歩けそうもないんでしゅ。
しばらく、こうしていれば直ると思いましゅ。」
「そうか、歩けないのか。
ドーターちゃんは、オンブをして貰ったことはあるかい?」
変なことを言い出す小父さんにドタちゃんは戸惑いましたが
「はい、お父しゃまに、よくオンブして貰いましゅた。」
と、答えました。
小父さんは、細い竹の棒と篭を木の蔭に隠して、小川を越えてドタちゃんの処に来ま
した。
「ほら、小父さんの背中にオンブしな!小父さんのお家に行こう。」
ドタちゃんの前に、しゃがんで背中を向けました。
「いいんでしゅか?ドタちゃん重いでしゅよ。」
「いいんだョ、おいで。」
小父さんは、ドタちゃんをオンブをしたまま小川を渡り、森の中へ入っていきました。
山を3つ越えた処にお家が何軒も立っていました。
「ほら、あそこが小父さんのお家だよ。
セブって言う犬もいるよ。」
えっ!セブ?礼文?この小父しゃまはヒョットして・・・・・セブとうさんでしゅか?
お家に着きました。
「おとうさん、お帰り!あれ・・・、背中の子はだあぁれ?
わたしはセブ、あなたはどなた?」
庭先で鹿の角をかじっていたワンが来て聞きました。
「ドーターちゃん、降ろすよ、いいかい?」
地面に降りたドタちゃんはセブちゃんに挨拶をしました。
「はじゅめましゅて、セブお姉しゃま、わたしは内藤ドーターでしゅ。
小父しゃまに、森の中で助けてもらって、此処まで連れてきていただきましゅた。」
「早かったわね、魚は釣れたの。アラッ、礼文?じゃあ無いわねぇ。
まぁーしっかりとキチャナイこと!」
家の中から出てきて、笑いながら喋っているこの女の人が、セブかあさんでしょう。
「この子、人間の言葉が喋れるんだ。」セブとうさんが言いました。
ドタちゃんは、「セブかあさんしゃまでしゅか?内藤ドーターでしゅ。」と挨拶をし
ました。
信じられないという顔をしていたセブかあさんは、首を振りながら我に帰って、
「ドーターちゃん、小父さんや小母さんとお話をしても良いけれど、ヨソのお家の、
小父さん小母さんとはお話をしてはダメよ!
犬はお話ができない、ということになっているのよ。」
「はい、解りましゅた。
千葉のお家に帰りたいんでしゅけれど、どっちへ行ったら良いんでしゅか?」
「BDNのネットでドーターちゃんは『訪ね犬』になってるわ、みんなと連絡をとっ
てうまく帰れる様にしてあげるから待っていなさい。
ドーターちゃん、お・い・で。」
ドタちゃんはセブかあさんに連れられて『おぶー』に入りました。
セブかあさんの『おぶー』は、お母しゃまと違って優しく・優しく洗ってくれました。
何日ぶりでしょう、白いアンヨです。
「ドタちゃんのアンヨは、まだ白かったんでしゅねぇ。」
傷口には、特製のナメクジ酒を塗ってもらい、スタミナ補給にスズメバチ料理をいた
だきました。
セブちゃんが自分のお気に入りのリボンをくわえて来て、おかあさんに渡しました。
「あら、セブからのプレゼント?、ドーターちゃん女の子らしくチョンチョリンをし
てあげるわ。」
ドタちゃんは、久しぶりに可愛い女の子になれました。
Pretty Again !
「おかあさーん」玄関でワンの声がします。
「あーら、うさぎと斐加とシェルが来たわ。ドーターちゃん、今夜は宴会よ。」
「宴会?」
お肉がいっぱい、山のお魚さんもいっぱい、果物も、鹿の角もあります。
「宴会って楽しいでしゅう!」生まれて初めての宴会です。
セブかあさんがMac部屋から出てきて、
「ドーターちゃん、今メールでお父しゃまと連絡が取れたわ、BDNのみんなも協力
して千葉へ帰してくれると言ってるわ。
明日、八ヶ岳のたぅママの処へ行きましょう。」
セブちゃん・シェルちゃんの間でドタちゃんは寝ています。
ドタちゃんは「エヘヘヘ・・」と笑いながら寝ていました。
猪狩セブ 長野
宇治シェル
長野 セブちゃんの娘
うさぎ 宇治純子さん
斐加 小うさぎ(宇治さんのお嬢さん)
「さあ! 起きて、起きて、お出かけよ。」
「おかあさん、もっと寝てたいよ〜。」
セブちゃんは起きられないようです。
「だめぇ! 今日は今からおぅり君のお家に行くの。」
「えっ! おぅり君のお家、じゃあ起きるわ、早く行こう。」
セブちゃんが、ぱっと起き上がりました。
ドタちゃんはセブかあさんに、またナメクジ酒を塗ってもらい、スズメバチのサナギ
のご飯を食べました。
みんながご飯を食べ終わると、セブとうさんが
「ドーターちゃん、小父さんはお仕事に行くからね、気を付けて千葉に帰るんだよ。」
とおっしゃいました。
「いろいろ、お世話になりましゅた。ドタちゃんは、良い子で千葉に帰りましゅ。」
ドタちゃんは、セブとうさんに、お礼を言いました。
「じゃあ、私達も用があるから帰るわ。ドーターちゃん脱走しちゃあダメよ。」
シェルママが笑いながら言いました。
「さあ、行きましょう。」
みんなで出発です。
『らぶふぉう』には、セブかあさん、セブちゃん、ドタちゃんが乗ります。
「それじゃあ、出発!」
「ドーターちゃん、さよなら。」シェルママの車の中でシェルちゃんが
おしっぽをパタパタしながら、言いました。
「さよならでしゅぅ〜。」
2台の車はしばらく一緒に走って、右と左に別れました。
「さあ、飛ばして行くわよ。」
小さなお家の中の小父さんから、紙きれを貰ったセブかあさんが言いました。
前から車が来ない道です。
道が2本・3本一緒になっています。
すごいスピードで走ります。
ドタちゃんは、こんなに速い車に乗ったのは、初めてでした。
「しゅごいでしゅねぇ、近くの草や木がビュンビュン飛んでいきましゅ。
ドタちゃん、この道を走ってくれば良かったでしゅ。」
「ドーターちゃん、ここは高速道路といって車だけの道なの、
ゼッタイにドーターちゃん達は入っちゃいけないの、ものすごく恐いからねっ!
ダメよ、わかった?」
セブかあさんの顔から笑いが消えました。
きっと、ドタちゃんが脱走して、この道を使って千葉に帰ることを考えている、と思っ
たのでしょう。
ドタちゃんは、セブかあさんの心配している事なんか、ナァーンも考えていません、
初めての高速道路の景色に、ただワクワクしていたでけです。
山が、木が、湖が、飛んでいきます。
「あともう少しよ。」
また、小父さんが小さなお家の中に立っていました。
車はそこで停まって、すぐに動きました。
今度は、ゆっくりと走りました。
「さあ、着いたわ。」
車を停めてセブかあさんは、外国のお写真に有る様なお家に入っていきました。
セブかあさんと、女の人と、小さい頃にラナたんとマザー牧場で会った事のあるワン
が来ました。
セブちゃんが言いました。
「ドーターちゃん、おかあさんが言っていたとうり、人間の言葉は喋っちゃあダメよ!
いいこと、本当はワンはみんな人間の言葉は喋れるんだけれど、喋らないだけなんだ
からね。
人間は人間の生活、ワンはワンの生活、お互いよく解らないから幸せなことも多くあ
るのよ。」
「解りましゅた。もう人間の言葉は喋りましぇん。」
「ドーターちゃん、いらしゃいませ。
今日は、たぅままのお家にお泊まりですよ。」
「オッス、俺オーストラリアン・シェパードの『おぅり』ヨ・ロ・シ・ク
セブ〜、久しぶりだねぇ。」
ピカピカの毛艶、短くピタッとした黒・茶・白のコート、
ビアディにはないカッコ良さです。
「それじゃあ、仕事が詰まってるので、ゴメンネ」
「おかあさん、もう帰るの、おぅり君と遊びたい。」セブちゃんはもっと居たがって
います。
「ドーターちゃん、脱走しないで帰るのよ、さよならネ。」
セブかあさんが心配そうに言いました。
ドタちゃんは言いつけどうりに人間の言葉は喋らずに『ワン』と一言吠えました。
『らぶふぉう』が見えなくなるまで、おしっぽパタパタで見送りました。
「さぁ、ドーターちゃんお家に入りましょう。
たぅままはお店があるから、おぅりと遊んでいてちょうだい。」
ドタちゃんは、おぅり君の後についてお店の入り口で、おネンネをしました。
「ドーターちゃん・ドーターちゃん」
おぅり君が呼びかけますが、ドタちゃんは答えて良いのか、悪いのか解らずに困って
います。
「ドーターちゃん、人間と人間の言葉でお話しなければ、ワン同士はワンの言葉でお
話ししても大丈夫だよ。」
「あー、そうだったんでしゅか?ヨカッタでしゅう。」
「なあんだ、そんなことで喋ってくれなかったのか。
俺、ビアディじゃあないから嫌われて居るのかと思ってたよ。」
おぅり君とは直ぐに仲良しになりました。
追いかけっこもしました。
ドタちゃんが、どんなに逃げてもおぅり君はすぐ脇にいます、急に曲がってもすぐ脇
についてきます。
おぅり君は八ヶ岳の事をいろいろ教えてくれました。
ドタちゃんは、海のお話しをしました。
おいしい夕御飯をお腹いっぱいいただき、ヘソ天でおネンネしました。
Dan & me
ドタちゃんは「ダンお兄しゃまも一緒に来れば良かったのに。」と思いました。
稲葉ラナ 栃木
岩井タゥザー 山梨 1999.12.25 逝去
岩井おぅり オーストラリアン・シェパード ヒースガーデンの看板犬
昨日のセブかあさんのお家でも、今日のたぅままのお家でも、良く眠れました。
夢の中でも、美味しい お肉・お魚しゃん・果物・・・・ハチのサナギを食べている
ドタちゃんです。
「ドーターちゃん、朝の散歩に行こうよぉ〜、もう起きなょ〜。」
おぅり君はお散歩に行くのに、ドタちゃんが起きるのを待っていましたが、あんまり
ドタちゃんが起きないので、とうとうガマンできずに呼びかけたようです。
此処は八ヶ岳、涼しくてものすごく良く眠れるんです。
散歩から帰ってきたら朝ご飯です。
スゴ〜イご馳走です。
夢の中と同じお肉・お魚しゃん・果物・・・・でも、ハチのサナギは有りません。
とっても美味しいご飯を、昨日の夜・今朝とお腹一杯食べました。
「ドーターちゃん、今日、たぅままのお店はお休みだから、良い処に行きましょうね。
私も、あそこに行くのは、随分と久しぶりだから楽しみなのよ。」
おぅり君が「まま、俺は留守番なの?」
と、心配顔でたぅままを見上げています。
「あらあら大丈夫、おぅりも一緒よ。」たぅままが言いました。
お昼になりました。
「ドーターちゃん、おぅり、さぁ出掛けましょう。」
お店の前の車に乗りました。
たぅままは運転席、おぅり君は助手席、ドタちゃんは後ろの席です。
「おぅり、ダメよ!今日は後ろの席でお兄ちゃんらしく、ドーターちゃんの面倒を見
ていてあげて!」
おぅり君は助手席を飛び越えて後ろのドタちゃんの隣にきました。
これが『災難』になるとも知らないで・・・・・・・・
車に乗る時にドタちゃんは思いました。
えっ!車に乗るんでしゅか?
昨日の夜、ご飯をい〜ぱい食べましゅたよ。
今朝も、美味しいご飯をい〜ぱい食べましゅたよ。
いちゅも、お家では車に乗る時はご飯を食べさせて貰ってないけど・・・・
車は出発しました。
しばらく、ゆっくりと走ってました。 が
「いけましぇん、いけましぇん、 ウッ ウッ
『ウップ・ウップ』でしゅ。
ウッ ウッ
ドタちゃん号ではありましぇん。 ガマンでしゅ。
ウッ 」
「ドーターちゃん大丈夫かい?」
「ダメ、ウッ・・・ でしゅ。」
ドタちゃんの様子がおかしくなったので、おぅり君が、「ワンッ」と吠えました。
「どうしたの、ドーターちゃん!」
たぅままが車を停めて後ろを振り向きました。
「ウップ〜ゥ、ウップ〜〜ゥ」
ドタちゃんはガマンできません。
でも、もう出し慣れていますから、出しても良い場所を苦しい中で一生懸命探しまし
た。
足下のマットしか有りません、でもおぅり君がその上に座って、心配そうにドタちゃ
んを見上げています。
「ウゥゥップ〜〜」
おぅり君はビックリして座席に飛び上がりました。
スットライック〜ッ!でしゅ。
おぅり君の居なくなったマットの上にドタちゃんの『ウップ』が広がっています。
「そうかぁ、朝ご飯をあんなに食べさせちゃあいけなかったんだ。
しばらく、休憩しましょう。」
休憩して、おぅり君の足を拭いて、ドタちゃんの『ウップ』で臭くなったマットを、
ビニールの袋に詰めて、窓は全部開けて、出発です。
昨日と同じで、小さなお家の中に立っている小父さんの処を通ると『高速道路』に入
りました。
景色がビュンビュン、風がビュンビュンです。
風を受けているドタちゃんの顔を見ておぅり君が
「ドーターちゃんは、風を受けると嬉しそうな顔になるんだねぇ。
走っている時と同じ顔だね。」と言いました。
車が少しづつ多くなってきたような気がします。
ドタちゃんは、「あと何日寝たら、お家に帰れましゅかねぇ。」とつぶやきました。
高速道路を降りました。
車がいっぱいです。
「おぅりお兄しゃま、何処に行くんでしゅかぁ?」
「俺も知らないんだけど、東京か、神奈川だと思うよ。」
しばらく行くと、前の方にこんもりとした、小さな山が見えてきました。
車は、そちらに向かい少しスピードを出しました。
途中まで来た時です。
「あれ、ドタちゃん此処は知らないでしゅけれど、なんだかとっても懐かしい
ような、ホッとしゅるような臭いがしましゅ。」
「草や木の臭いの中に、ドーターちゃんやセブと同じような臭いがするよ。」
おぅり君も何か感じてる様です。
お家が在ります。
広いお庭が在ります。
「ドタちゃん、なんか頭と胸が熱ゅくなっていましゅ。
また、『ウップ』なんでしゅかねぇー?
しょれとも、ビョーキなんでしょうかねぇー。」
車はお家の前に着きました。
他にも車が何台か停まっています。
「ドーターちゃん、着きましたよ。」
たぅままが、ドアを開けてくれました。
お家の中から人が出てきました。
ワンもいます。
一番前には、「デイジーお姉しゃまと、アリエルお姉しゃまと、男の人でしゅ。
と、言うことは・・・・・デジパパしゃま?でしゅかぁ。」
「ドーターしゃん、良く帰ってきたね!BDNのみんなが、心配していたんだよ。」
「あれぇ〜っ!ミッキーマウスしゃんじゃあないでしゅぅ。
オッキくって、優しそうで、熊のプーさんみたいでしゅ。」
「おかえり、『富士山』に着けた?ドーターしゃん。」
「体は大丈夫?ドーターしゃん。」
デジパパの横から、ヒゲの小父さんと小母さんが・・・・・
いえ・いえ、懐かしい・懐かしい『飛鳥のお父しゃまと、お母しゃま』でしゅ。
「コラ!飛鳥一のオテンバ娘め!」
優しく笑いながらドタちゃんの頭を、ナデナデしてくえましゅた。
「ハンベイ、メゴ、おいで!」
信子お母しゃまの声に、後ろから2匹のワンが顔を出しましゅた。
「父しゃま!母しゃま!」
「ヒロイン、いいえドーター、千葉のお父さんやお母さんに、心配を掛けてはダメよ!
リッパなお姉ちゃんビアになってちょうだい。」
優しゅくメゴ母しゃまに、叱られましゅた。
「ドーターちゃん、元気!」
「ドーター、久しぶりだね。」
「お姉ちゃん、体はどう?」
小しゃなビアが3匹、ハンベイ父しゃまの脇から出てきましゅた。
「あなた達は、誰でしゅか?」
「ジジだよ。」
「ポチャリ!」
「タリアよ。」
「あれ!みんなドタちゃんが千葉へ行く前と同じ大きさでしゅね。」
「ドォー!」
声がしゅたら、急に固い物が当たって、オツムが痛くなりましゅた。
クラクラしましゅ。
この声!この名前の呼び方!この痛さ!
振り返ると『上野の西郷さん』が、立っていましゅ。
でも・・・この『西郷さん』洋服を着て、犬もチェーン・カラーを着ゅけていましゅ。
おしっぽが、パタパタ・パタパタ、おしりがプルプル・プルプルしてきましゅた。
「お・と・う・しゃま、お父しゃまぁ〜ぁ。
ダンお兄しゃま!」
泣いてるような、笑ってるような・・・もともと『変なオジサン』なのに、とっても
『変な顔』でしゅ。
ドタちゃん目の周りが熱くなってきましゅた。
やっぱり、ビョーキでしゅ。
「ド〜タァ〜」
お母しゃまの声でしゅ!
お父しゃまの後ろから、お母しゃまが顔を出しましゅた。
アレレ!ドタちゃんお目目がホントに変でしゅ。
「ドーター、あなた目に涙を浮かべているの?」
お母しゃまの顔がボ〜としか見えましぇん。
あれ!お母しゃまのお顔が、お祖母しゃまのお顔に見えましゅ。
「犬は泣かないものなのよ。」
お母しゃまが、指でドタちゃんのお目目を拭いてくえましゅた。
お母しゃまのお顔がハッキリ見えましゅ。
お母しゃまの涙に夕日が映って、キラキラとお星様のようでしゅ。
その涙が落ちる時に、涙の中に人の影が映りましゅた。
でも、誰なのかはよくわかりましぇん。
ドタちゃんには、お祖母しゃまのようにも見えましゅた。
「ドータァー」お母しゃまがドタちゃんをギューッと抱きしゅめて、
大きな声で泣きだしましゅた。
お母しゃま、苦しい・・・・苦しいでしゅぅ。
ドタちゃんは「苦しいけれど、とっても嬉しいでしゅ。」とつぶやきました。
Happiness....
飛鳥のお父しゃま(二朗) 東京 ゴールデン・バットン犬舎
飛鳥のお母しゃま(信子)飛鳥二朗氏 奥様
父しゃま ハンベイ Innovater
of Golden Button 新保むっく兄弟、鈴木モル兄妹、霜アクセル等BDNに子供多数。
母しゃま メゴ
Doreen of Golden Button 伊藤ジャムの母でもある。
西川ジジ 千葉 ハンベイの子
西山ポチャリ 神奈川 ハンベイの子
竹川タリア 福島 ハンベイの子
BDNでたった一人のドーターの姉妹
しょの14
目を開けたら、真っ暗でしゅ。
ドタちゃんのお腹の上に、お父しゃまのアンヨが乗っかっていましゅ。
「お父しゃま、重いでしゅ!苦しいでしゅヨ!アッチに行ってくだしゃい!」
お父しゃまのアンヨをどかしてから、ドタちゃんは考えましゅた。
「あれ!
ドタちゃん、お山を越え、町を越えて、『富士山』に登り、森を走ったハジュでしゅ
けれど?
ウエンディしゃん、ウエンディママしゃま、デイジーお姉しゃま、アリエルお姉しゃ
ま、リン小父しゃん、美緒ママしゃま、美緒お姉しゃま、茶緒お姉しゃま、ジェーム
ズお兄しゃま、明君お兄しゃん、ケンお兄しゃま、モモお姉しゃま、ティナお姉しゃ
ま、ブレンダお姉しゃま、デニースお姉しゃま、月の女神しゃま、トラックの小父しゃ
ん、セブとうさんしゃま、セブかあさんしゃま、セブお姉しゃま、シャルママしゃま、
斐加しゃん、シェルお姉しゃま、たぅまましゃま、おぅりお兄しゃま、デジパパしゃ
ま、飛鳥のお父しゃま、飛鳥のお母しゃま、ハンベイ父しゃん、メゴ母しゃん、ジジ
お兄しゃま、ポチャリお兄しゃま、タリアしゃん、
みんなと会って、お話をしたハジュなんでしゅけど?・・・・・・・・
お肉、お魚しゃん、果物・・・・・ハチのサナギ、美味しい物を食べたハジュなんで
しゅけど?・・・・・・・・・
お手手もアンヨも痛くありましぇん・・・・・
なんだったんでしゅかねぇ。
でも、月の女神しゃまのおっしゃった、
【『てあ』は、残されて、想い続ける人が、何時か見つけることのできるものです。
ドーターちゃんも何時か見つけられますよ。】
の言葉と、
美緒ママしゃまの涙がお星様のように見えたり、ドタちゃんの涙でお母しゃまの姿が
お祖母しゃまに見えた事・お母しゃまの涙がお星様のようにキラキラ光って、中にお
祖母しゃまが見えていた事だけはシッカリと憶えていましゅ。
目覚まし時計は四時半をさしていましゅ。
「チョット早いでしゅけど、お母しゃまを起こしましょう。」
「お母しゃま、お母しゃま、朝でしゅよ、お散歩でしゅ。」
お母しゃまは、寝ボケ声で
「お願いだから、お葬式で疲れているの。
お散歩は、中止!
もう少し、ネンネしなさい。」
エ〜〜ッ
なんということでしゅか?
久しぶりに帰って来た、可愛い娘がお散歩に行きましょうと誘っているのに・・・
グレてやるぅ! でしゅ。
しょの為には、まじゅ、家出でしゅ!脱走でしゅ!
「ダンお兄しゃま!玄関を開けて下しゃいましぇ〜〜。」